OL 万千湖さんのささやかなる野望
「あっ、じゃあ、ここからは二人だけの方がいいよね。
 白雪くんは転職してきたばかりで社内のこともよく知らないから、教えてあげてね。

 仕事の話から入った方が話も弾むだろうし」

 ……弾む予感がしません。
 この人の目つきを見ていると。

 鋭く整った目からは、侮蔑と蔑みしか感じません、と思いながら、万千湖は固まる。

「じゃあ、小鳥遊くん、よろしくね~」
と人の良い部長はせかせかと出て行った。

 ぱたん……と扉が閉まってしまう。

 レストランの個室に、腕組みしてこちらを見下ろす、話したこともない隣の課長と二人きり。

 フリーズする万千湖に、溜息をつき、駿佑は言った。

「お前、別にこの見合い話、進めたいわけじゃないんだろう。
 俺もだ。

 だが、せっかく紹介してくれた部長の顔を潰すわけにもいかない」

 おや? 意外と義理堅い。

 整いすぎた顔で喜怒哀楽が感じられないから、勝手に情が薄いのかと思ってましたよ、と万千湖は駿佑を見つめる。

 だが、相変わらず、無表情だった。
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