暴走環状線
岩崎建設 不動産営業部 部長室。

紗夜の右隣に咲。
砂辺の左隣に美夜。
向かい合ってる双子のミニスカガール。

落ち着かない砂辺と紗夜。

(何であなたが来るのよ、全く)
(何であなたが来るのよ、全く)

紗夜の混乱は、砂辺を上回る。
(さすが一卵性…考えることも同じだわ💦)

「と、ところで、用件はなんだ、刑事さん?」

「あ、はい。実は目黒のこのマンションなのですが、10年前にハッピー不動産が取り扱っていた様でして」

紗夜が写真を見せる。

「ああ、これか。俺が受け持ってた物件で、ハッピー初の高級マンションだったな。5、6年前に大手に売り渡したが…それで?」

「10年前の記録が残ってないでしょうか?」

「いや〜わざわざ来て貰って悪いが、ここに来た時に、古い管理外の物件については、記録も全て廃棄してしまったからな」

(…?)
美夜の心理が反応した。

「10年前なら、私も何件かそこへ入れたわ。そこって、先日バスの爆発で亡くなった女性が住んでいたマンションよね?」

「彼女のこと、知ってんの美夜?」

「私は扱ったお客様のことは、忘れないのよ。誰かさんとは違ってね」

(記憶力の良さも同じ…か。飲んでなきゃ)

「誰かって誰よ美夜?私も忘れられるもんなら忘れたいけど、残念ながらあなたと同じよ!」

(確かに…不動産と警察は立場が真逆ね)
紗夜も、咲の辛い思いには共感した。

「確か…値切りもせずに現金一括払いだったわ。部長も覚えてるでしょ?」

「あぁあの時か、あれは本当に驚いたよな。8800万円を即日キャッシュで払いやがった」

「そんなことがあるの?」

「ま…まぁ、美夜のお得意さんには良くあるが、あんな若い娘では、あり得ないな」

「一応は、ヤバいお金じゃないか調べたけど、支払いは…え〜となんて言ったっけな〜ちょっと待ってよ…あっそうそう!確か帝都銀行の偉い方よ。名前はごめん、知らない」

「帝都銀行…東京本店のトップは、菅原義光」

咲、美夜、砂辺。
3人の心に感じた疑心、軽蔑、嫌悪。

「そんなに悪い方なんですか?」

「えっ?」
(何も言ってないわよね、私…)

「あ、美夜ごめん。この子心理捜査官なの」

「読心術ってやつか。知りたくもない秘密や、嫌な心が見えてしまうってのは、大変だな」

意外と分かる人、砂辺。

「あまり、いい話は聞かないわね。政治や祭り事の裏には、必ず彼の影があるって話よ」

(菅原…義光)
新しい人物に、紗夜の勘が働き始めていた。

「紗夜、帰るわよ」

「悪ィなぁ、大して役に立てずに」

「いえ、手掛かりになるかも知れません。ありがとうございました」

「咲…姉さんをよろしくね」

差し出された右手を、思わず手袋をしたまま握ってしまった紗夜。


「ドクンッ…」
(えっ?)(な、なにこれ?)

「ご、ごめんなさい!私ったら失礼なことを」

「いいのいいの、さぁ行くわよ」

(何、あの感じ…?)
握った途端に背中を這いあがった悪寒。
去って行く紗夜を見つめる美夜。

(何だろう、あの孤独と哀しみと…)

鳳来咲、鳳来美夜。
瓜二つの2人に、何か普通ではないものを感じた紗夜であった。
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