暴走環状線
5章. 復讐の終着駅
〜岐阜県美濃加茂市〜
東京から新東名を使い、愛知県豊田市経由で東海環状自動車道、通称MAGロードで、美濃加茂インターで下車。
とても電車を使う気分では無かった。
「しかし、ほんっとに凄いな、この車❗️200キロまでの加速半端ねぇ」
「一応、私達警察官なんですけど、淳💧」
運転手として雇われた淳一。
「急いだ方がいいじゃねぇか」
「せめて、サイレンくらい鳴らしなさいよ」
「それこそ、職権濫用じゃねぇか?」
「おい…夫婦仲良いのも良いが、着いたぞ」
美濃加茂市、美濃太田駅。
名古屋から飛騨高山へ向かう路線と、多治見へ向かうローカルな太多線の駅である。
二人を下ろし、駅前の駐車場に車を止めに行く淳一。
駅構内の売店に寄る豊川。
「ちょっと話をいいか?」
「またあんたかい。私は何も知らないよ」
(なにか…隠してる)
「わぁ〜美味しそうなお弁当!私、駅弁って食べたことないんです。お勧めはどれですか?」
お客となると、邪険には扱えない商売人。
「そうかい、女性にはこれが人気だよ」
「じゃあ、一つ下さい。豊川さんも一緒に食べましょうよ、お昼だし」
そこへ淳一も来た。
(ナイスタイミング)
「淳はどれにする?」
「あんた達、夫婦だね」
「えっ?分かりますか?」
「客商売してると、だいたい分かるもんさ」
「すご〜い。早く決めてよ、お腹空いたから」
(よし、警戒心が消えた)
「じゃあ、これにするか」
「何だかわかんねぇが、俺もそれで」
「まいどあり。良かったら、裏へ来な。熱いお茶ぐらいだすから」
「ありがとうございます。あっこれ、東京のお土産です…お土産売ってるお店に、お土産って変な感じですね、すみません」
「あはは、元気な娘《こ》だね。ありがたくいたたぎますよ」
お茶を出してもらい、小さなテーブルを囲む4人。
「すみません、紗夜といいます。少しあの事故の夜のことで、協力して欲しくて」
暫く考えた後、話し始めた。
「山岸さんは、物静かでいい人でした。10年くらい前に、東京から赴任して来てね。まぁこんなローカル線に来るには、何かあったんだとは思ってましたが、まさかあの山手線の大事故とは驚きました」
「山岸さんが話したのですか?」
「ええ、彼は皆んなが嫌がる遅番勤務を受け持っててね。毎日最終の回送電車を多治見へ運んでました。いつしか、ここでこうして、話をする様になって、色々話してくれました」
(あの夜のことを聞いてくれ。何か食べなかったか)
豊川は、黙って聞きながら、紗夜に指示を出していた。
「あの夜の事なんですが…」
彼女の警戒心と深い悲しみが伝わってくる。
「何か食べたか知りませんか?」
チラッと豊川を見る彼女。
豊川にも訊《き》かれ、答えなかった問いであった。
「彼はいつも駅弁を買ってくれてね、多治見へ折り返す待ち時間に、事務所で食べてました」
(最終に乗る前だ)
「最終の回送電車に乗る前は、どうですか?」
「いつも売れ残りのパンやおにぎりをあげてね、あの夜もあのベンチで、話をしながら食べてました」
彼女の中で、悲しみが込み上げて来るのが分かった。
「辛いことを聞いてすみません。でもだいじな事なんです。あの夜、鈴蘭恭子さんも寄りましたよね?」
急に警戒心が強くなる。
「鈴蘭恭子?知りませんねぇ。まぁ寄ったかも知れませんが、覚えてませんね。さて、そろそろ仕事に戻らないと。ごゆっくりしていってください」
「仕事中にすみませんでした。ありがとうございました」
売店に戻って行く彼女。
豊川が紗夜を見る。
黙って頷《うなず》く紗夜。
「じゃあ、車を廻して来るからな」
(そう言えば、やけに静かだったわね淳。気を回したのかな?)
ただ食べるのに夢中だっただけである💧
東京から新東名を使い、愛知県豊田市経由で東海環状自動車道、通称MAGロードで、美濃加茂インターで下車。
とても電車を使う気分では無かった。
「しかし、ほんっとに凄いな、この車❗️200キロまでの加速半端ねぇ」
「一応、私達警察官なんですけど、淳💧」
運転手として雇われた淳一。
「急いだ方がいいじゃねぇか」
「せめて、サイレンくらい鳴らしなさいよ」
「それこそ、職権濫用じゃねぇか?」
「おい…夫婦仲良いのも良いが、着いたぞ」
美濃加茂市、美濃太田駅。
名古屋から飛騨高山へ向かう路線と、多治見へ向かうローカルな太多線の駅である。
二人を下ろし、駅前の駐車場に車を止めに行く淳一。
駅構内の売店に寄る豊川。
「ちょっと話をいいか?」
「またあんたかい。私は何も知らないよ」
(なにか…隠してる)
「わぁ〜美味しそうなお弁当!私、駅弁って食べたことないんです。お勧めはどれですか?」
お客となると、邪険には扱えない商売人。
「そうかい、女性にはこれが人気だよ」
「じゃあ、一つ下さい。豊川さんも一緒に食べましょうよ、お昼だし」
そこへ淳一も来た。
(ナイスタイミング)
「淳はどれにする?」
「あんた達、夫婦だね」
「えっ?分かりますか?」
「客商売してると、だいたい分かるもんさ」
「すご〜い。早く決めてよ、お腹空いたから」
(よし、警戒心が消えた)
「じゃあ、これにするか」
「何だかわかんねぇが、俺もそれで」
「まいどあり。良かったら、裏へ来な。熱いお茶ぐらいだすから」
「ありがとうございます。あっこれ、東京のお土産です…お土産売ってるお店に、お土産って変な感じですね、すみません」
「あはは、元気な娘《こ》だね。ありがたくいたたぎますよ」
お茶を出してもらい、小さなテーブルを囲む4人。
「すみません、紗夜といいます。少しあの事故の夜のことで、協力して欲しくて」
暫く考えた後、話し始めた。
「山岸さんは、物静かでいい人でした。10年くらい前に、東京から赴任して来てね。まぁこんなローカル線に来るには、何かあったんだとは思ってましたが、まさかあの山手線の大事故とは驚きました」
「山岸さんが話したのですか?」
「ええ、彼は皆んなが嫌がる遅番勤務を受け持っててね。毎日最終の回送電車を多治見へ運んでました。いつしか、ここでこうして、話をする様になって、色々話してくれました」
(あの夜のことを聞いてくれ。何か食べなかったか)
豊川は、黙って聞きながら、紗夜に指示を出していた。
「あの夜の事なんですが…」
彼女の警戒心と深い悲しみが伝わってくる。
「何か食べたか知りませんか?」
チラッと豊川を見る彼女。
豊川にも訊《き》かれ、答えなかった問いであった。
「彼はいつも駅弁を買ってくれてね、多治見へ折り返す待ち時間に、事務所で食べてました」
(最終に乗る前だ)
「最終の回送電車に乗る前は、どうですか?」
「いつも売れ残りのパンやおにぎりをあげてね、あの夜もあのベンチで、話をしながら食べてました」
彼女の中で、悲しみが込み上げて来るのが分かった。
「辛いことを聞いてすみません。でもだいじな事なんです。あの夜、鈴蘭恭子さんも寄りましたよね?」
急に警戒心が強くなる。
「鈴蘭恭子?知りませんねぇ。まぁ寄ったかも知れませんが、覚えてませんね。さて、そろそろ仕事に戻らないと。ごゆっくりしていってください」
「仕事中にすみませんでした。ありがとうございました」
売店に戻って行く彼女。
豊川が紗夜を見る。
黙って頷《うなず》く紗夜。
「じゃあ、車を廻して来るからな」
(そう言えば、やけに静かだったわね淳。気を回したのかな?)
ただ食べるのに夢中だっただけである💧