暴走環状線
〜品川車両基地〜

今夜の車両点検に向け、大勢の整備士達が集まってきた。

「なぁ、隊長見なかったか?」

「そう言えば、今夜はまだ見かけねぇなぁ」

車両整備工場へ入る整備士達。

「おい、早く灯りつけろ!」

「へい!」

新入りが電源の分電盤を開け、ブレーカーを入れた。


「な…なんてこった⁉️」

「た、隊長⁉️」

皆んなが見上げる場所に、隊長と呼ばれるベテラン整備長、熊谷拓哉がぶら下がっていた。




〜警視庁特別対策本部〜

いつもの様に、咲が電話にでる。

「はい、警視庁刑事課」
同時にスピーカーフォンに切り替える。

「品川署の都築《つづき》です。品川車両基地からの通報で現場に来ました。車両整備士の熊谷拓哉《くまがいたくや》が、首を吊って死亡しています」

「自殺じゃねぇか、全く」
いつもの様に淳一がボヤく。

「状況をおしえて、何があったの?」
そんなことで、ここに電話するはずはない。
咲には、ただの自殺じゃないことが分かった。

「はい、書置きがあって…」

「読んで❗️」

『今起きている爆破事件も、10年前の品川事故も、全部私のせいです。あの時、信号機をちゃんと直していたら、事故は起きなかった。ごめんなさい。上から、誰にも話すなと言われて。でも、そのせいでまた人が死んで、山岸さんまで。そして、また私はとんでもないことをしてしまいました。家族を殺されると脅されて、仕方なかったんです。許して貰えるとは思えません。あいつらを止めてください。私は死んで償います。ごめんなさい。』

「以上です。いったい…」

咲が電話を切った。

沈黙の時が流れる。



「いいかしら?皆様」

一番奥から声がした。

「コツコツコツ」
ヒールの音を響かせ、ヴェロニカが前へ出る。

「だ…誰なんだ、君は?」

「富士本さん、ヴェロニカさんです」
心を読んでこそ分かったが、紗夜も驚いた。

「お久しぶりです、皆さん。多分…時間がありません。昴ちゃん」

「ちゃん?」咲も突っ込めない。

「ヴェロニカさんのおかげで、暗号が解けました。お願いします」

「数字の羅列は、暗号の基本よ。数字を使った暗号の場合、単純に何かに番号を付けて、それに文字を当てるの。今回の場合、犯人達は10年前の被害者遺族が主なメンバー。だからメインになるのはやはり山手線。それも事故が起きた内回り、つまり反時計回りね。スタートを品川とすると、品川が1、次の高輪ゲートウェイが2、と言う風になる。山手線の駅は30だから、これに文字を当てはめるなら、平仮名では足りないから、アルファベットに決まり」

?マークの大群を感じたヴェロニカ💧

「昴ちゃん、山手線の図を出して」

テーブルに図を広げる。

「まぁ…何でも関係ないんだけどね、犯人が山手線にしたのは、もちろん事故のアピールと、ご丁寧に、アルファベットと気付かせるためね。品川を1としたら、品川がA、次の2がBあとは同じ様に数字とアルファベットを割り付けるだけ。品川から始めたら、26駅目の渋谷がZ。ほら30駅で足りるでしょ。分かったかな〜?」

「じゃあ、先日久米山が殺された後の、『20 8 5 5 14 4』とその前の『11 21 13 5 25 1 13 1 27 13 5 7 21 18 15』は?」

「『20 8 5 5 14 4』は、THEEND、『11 21 13 5 25 1 13 1 27 13 5 7 21 18 15』は、27をスペースとすれば、KUMEYAMA MEGURO になるわけ。1人が久米山の行き先を教え、殺人犯が殺した事を報告したのね」

「なるほど、さすがヴェロニカさんだ」

「ちなみに、山岸が殺された後に、『11 1 14 18 25 15 21』と書き込みがあり、これはKANRYOU となり、この色が加藤恭子ね。THEENDの色は多分…戸澤公紀。後の2色は不明だけど、品川事故の関係者は間違いなし」


さすが世界最高頭脳…と感心する皆んな。
実際、昴から話を聞き終わった時点で、直ぐに分かったのである。

「感心してる場合じゃないわよ、皆さん。犯人達は、最後の仕上げをするつもりよ」

ヴェロニカが画面をスクリーンに出す。

『19 20 1 18 20』

「START」

読み上げた紗夜の背筋に、冷たい物が走った。

次の瞬間。

『15 11』3色の書き込みがされた。

「O K」
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