暴走環状線
咲は、浜田智久の調査にあたった。
派遣先での働きぶりは良く、同じ会社で契約を更新しており、正規採用の予定と聞いた。

事故の話を聞いた職場のショックは本物で、怨恨の手掛かりは全く見当たらない。

職場で慰留品を見せ、当人であることはまず間違いないが、念の為鑑識班を連れて、派遣会社が契約している浜田智久のアパートを尋ねた。

ミニスカ&ハイヒール&黒サングラス。
訝《いぶか》しげに咲を見る管理人。
警察手帳を見せても、信じたかどうか怪しい。

管理人に鍵を開けてもらう。

「彼女とか友人はいましたか?」
綺麗に整理された部屋である。

「いや〜見かけたことはないなぁ。ここの住人同士も、あまり交流はないですしね。でも、浜田さんは、ちゃんと挨拶はするし、いい方でしたよ」

鑑識班が、髪の毛や歯ブラシを袋に入れる。

「あ、終わったら声掛けますね」

管理人を追い出す。

気になったのは、卓上の写真であった。
(大学…か。なるほどね)

親しげに映る男3人と女1人。
もう1人の犠牲者、加藤吾郎がいた。

さりげなくバッグに入れる。
(あとは…と、これかな)

ノートパソコンを外し、バッグへ。

「咲警部…」

「調査のためよ、何か《《問題》》かしら?」

「い、いえ、何も💦」
鑑識班でも、咲の怖さは知っている。

「さぁて、撤収!結果出たら、直ぐに教えて」

管理人に鍵を返して車に乗る。
さっきの写真を携帯で撮り、昴に送る。

「あ、もしもし昴、今送った写真の…多分まだ生きてる2人。住所調べて保護よろしく」

「分かりました。淳さんは、加藤吾郎がいた蔵崎組に会いに、新宿歌舞伎町のクラブ『ビューティナイト』へ行きました」

「分かったわ」

(ビューティナイト…美しい夜…💧趣味悪ぅ)

「もうそんな時間か。ついでに飲みに行くか」

呟いて、夜の新宿へと走り出した。
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