ハロー、愛しのインスタントヒーロー
無理でしょう。だってコンビニに行くって言って出てきたんだもんね。絢斗は方向音痴だから一人じゃ知らない場所にも行けないし。
「行くよ」
クリアな声音で、絢斗が即座に断言する。
「奈々ちゃんが呼んでくれたら、僕はいつでも行く。どこでも行くよ」
なんてことないように、さもそれが当然のように宣うから、胸の奥が狭苦しくなる。どうしようもなく嬉しくて、悲しくて痛い。
「……嘘つき」
「今度は絶対だもん。嘘じゃないよ」
「だって、いつでもどこでもとか、無理でしょ」
「無理じゃないよ。奈々ちゃんが地球の裏側にいても、僕絶対に飛んでいくからね」
「ブラジル?」
「ブラジルってどこ?」
「日本の裏側だよ、ばか」
やっぱりばかだ。ばかなんだ、絢斗は。ブラジルの場所すら分かってないのに、簡単に地球の裏側とか言う。
来て欲しいな。ブラジルでも裏側でも、たとえ北極にいたとしても。凍えて死ぬまで待ってるから、来て欲しい。
「……いいよ、大丈夫。冗談だから。早く帰んないと沙織ちゃんに怒られるよ」
さっきから涙腺が壊れてしまっている。こんなぐちゃぐちゃの顔、見せられない。
「奈々ちゃん、僕ね、ばかなんだ」