ハロー、愛しのインスタントヒーロー
唐突な宣言に、は、と間抜けな声を出してしまった。やけに真面目なトーンで絢斗が自分を卑下する。
「ばかだから、色んなことを同時にやったり考えたりできない。大事なものも、一つしかつくれない。一つしか守れないんだ。だから僕は、奈々ちゃんしか大切にできないんだよ」
恥ずかしげもなくそう言って、彼は私の名前を呼ぶ。何度も。会えない日々に、私が絢斗の名前を呼んだように。
「奈々ちゃん、好きだよ。大好きなんだ。沙織ちゃんに怒られてもいい。それよりもね、僕は奈々ちゃんを大切にしたいから、奈々ちゃんが泣いてたらすぐに飛んでいくよ」
もう限界だった。
涙がとめどなく溢れてくる。人目も気にせずその場にしゃがみ込み、嗚咽をこらえることしかできない。
「あ、やと、」
「うん」
「きて、くれる?」
うん、と。もう一度頷いた絢斗が自信満々に述べる。
「いつでも呼んで。三分で行くから」
「なんで、さんふん」
「ヒーローっぽいでしょ?」
それ、ウルトラマンだけなんですけど。しかも戦闘時間なんですけど。
面倒くさいから、そうだね、と肯定してあげた。
三分って、もっと早くなんないの。カップラーメンつくれるよ。
インスタント麺ならぬ、インスタントヒーロー。三分でも何でもいいから、早く来て。