ハロー、愛しのインスタントヒーロー


唐突な宣言に、は、と間抜けな声を出してしまった。やけに真面目なトーンで絢斗が自分を卑下する。


「ばかだから、色んなことを同時にやったり考えたりできない。大事なものも、一つしかつくれない。一つしか守れないんだ。だから僕は、奈々ちゃんしか大切にできないんだよ」


恥ずかしげもなくそう言って、彼は私の名前を呼ぶ。何度も。会えない日々に、私が絢斗の名前を呼んだように。


「奈々ちゃん、好きだよ。大好きなんだ。沙織ちゃんに怒られてもいい。それよりもね、僕は奈々ちゃんを大切にしたいから、奈々ちゃんが泣いてたらすぐに飛んでいくよ」


もう限界だった。
涙がとめどなく溢れてくる。人目も気にせずその場にしゃがみ込み、嗚咽をこらえることしかできない。


「あ、やと、」

「うん」

「きて、くれる?」


うん、と。もう一度頷いた絢斗が自信満々に述べる。


「いつでも呼んで。三分で行くから」

「なんで、さんふん」

「ヒーローっぽいでしょ?」


それ、ウルトラマンだけなんですけど。しかも戦闘時間なんですけど。
面倒くさいから、そうだね、と肯定してあげた。

三分って、もっと早くなんないの。カップラーメンつくれるよ。
インスタント麺ならぬ、インスタントヒーロー。三分でも何でもいいから、早く来て。

< 120 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop