ハロー、愛しのインスタントヒーロー
絢斗はとっくのとうに決めていたんだね。迎えに来てくれないって、私が我儘を言って泣き喚いている時、絢斗は一人で苦しんでいた。答えの出せない難題だったのに、人一倍優しい彼だったのに、たった一つだけを選んだ。
自分が血を流すよりも、人を傷つけて見る血の方が辛い。絢斗はそう思うような人だから、沙織ちゃんを放っておくことなんてできないと思っていた。
嬉しい、と言ったら、怒られてしまうだろうか。ほっとしている私は、不謹慎で酷い人間だろうか。
「ハグとか、エビとか、そういう細かいことは分かんないけど……すごく、大切なんだ。気がついたら一緒にいて、奈々ちゃんがいないと落ち着かなくて、これからもそうなんだと思う」
彼の瞳にはいつだって明るいきらめきがある。悲しさをしまって、闇を背負って、それに負けないくらい明るく灯していける光。
無限にわいてくるのだと思っていた。絢斗はいつも何も考えずにへらへらと笑っているのだと思っていた。
「ずっと一緒にいたいよ。それって、好きってことじゃないの?」
私を貫く痛いほどの純情が、彼の今にも泣きそうな微笑みが、その動力は全て私なのだと教えてくれる。
「……うん。私も、絢斗と一緒にいたいよ」