ハロー、愛しのインスタントヒーロー
やっと分かったような気がする。家族でも恋人でもない。友達とも少し違う。
好きにはたくさん種類があって、その一つひとつを答え合わせのように相手と擦り合わせていくのは大変なことなのだ。
絢斗のことは大切だけれど、好きと真っ直ぐ伝えられるほど愛があるのかと聞かれれば難しい。
もちろん幼馴染としての情はあるし、弟のように愛しく思う時もある。私にとっての唯一無二は絢斗だ。一緒にいたい、いて欲しい。そういう未来を望んでいた。
「こら、君たち! そこで何してるんだ!」
不意に後方から飛んできた声に振り返ると、男性警官が駆け寄ってくるところだった。制服姿のまま夜道を歩いていたからだろう。
「絢斗、走るよ」
「えっ!?」
慌てふためく絢斗の手を引いて、五月の風をすり抜けていく。
最初は私が先導していたのに、あっという間に絢斗が隣に並び、それから少し前に出て私を引っ張る。
「あははっ、何か悪いことしてるみたいでどきどきする!」
悪いことしてるんだってば。
楽しそうに駆ける絢斗を斜め後ろから盗み見て、呆れると同時に感慨深くなる。