ハロー、愛しのインスタントヒーロー
結局私は絢斗の言葉に頷いてしまった。
沙織ちゃんにはなんて説明するんだ、と問いただせば、絢斗が眉尻を下げる。
「正直に言うしかないよ……奈々ちゃん家に泊まるって、電話する」
「ばかなの? 友達の家に行くとか、適当に嘘つきなよ」
「でも……」
「分かった。とりあえず、先にシャワー浴びてきな。走って汗かいたでしょ」
もごもごと二の句を継ごうとしている彼を浴室へ追いやる。タオルをぶん投げてやれば大人しくなった。
「さて、と」
シャワーの音が聞こえ始めたので、こっそりと脱衣スペースに置いてあった彼の学ランを拝借する。下着が目に入ったけれど、ぶっちゃけ興味はないし、ボクサーパンツは見慣れていた。
ポケットからスマホを抜き取り、制服を元あった場所に戻す。
絢斗もやはりスマホにロックはかけていないようで、スワイプだけで簡単に画面が開いてしまった。そういえば今朝も同じようなことをしたな、と思い出し、ため息をつく。
多量の通知は全て沙織ちゃんからのものだ。
シャワーの音は途切れていない。意を決して、私は彼女への発信ボタンをタップした。
「――絢斗っ!? 今どこにいるの!?」