ハロー、愛しのインスタントヒーロー



「奈々ちゃん、お風呂あがったよ。……奈々ちゃん?」


しばらく無心でテレビを眺めていた。
後ろからやってきた絢斗が、リモコンのボタンを押してテレビの電源を切る。


「奈々ちゃん!」

「うわっ」


耳元で大声を出さないで欲しい。反射的に肩が大きく跳ねる。
慌てて振り返れば、なぜかバスタオルを適当に纏っただけの姿で絢斗が立っていた。


「は!? 何で服着てないの!?」

「えっ、だって着替えないんだもん! これから寝るのに制服着たくないし……」

「だったら出てこないでよ! 向こうから呼べば良かったでしょ」

「呼んでも奈々ちゃん返事してくれなかった……」


ジト目で肩を落とされ、言葉に詰まる。
確かにそれは気付かなかった私が全面的に悪い。視線の行き場に困るので、早急に何か着てもらわなければ。

そういえば前にクラスの男の子が家へ来た時、ティーシャツを置いていったような気がする。


「あ、あった」


クローゼットの中を少し探してみると、目当てのものが見つかった。シンプルな黒いシャツ。伸縮性があるし、これなら大丈夫そうだ。


「絢斗、これ着て」

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