ハロー、愛しのインスタントヒーロー
*
「それでねっ、ななちゃんが……」
「はい、お話はご飯食べてからね。いただきますして」
「いただきます!」
「ほんと、いっつも“ななちゃん”の話ばっかりなんだから」
家で話すのは、大体が奈々ちゃんのことだった。
沙織ちゃんと奈々ちゃんが初めて会ったのは近所の公園で、最近は奈々ちゃんが家に帰りたくないと言うから、放課後によく遊んでいる。
「絢斗がご飯残さず食べられるようになったのも、ななちゃんのおかげだっけね。ちゃんと『ありがとう』って言うのよ」
「うん!」
沙織ちゃんは奈々ちゃんのことが好きみたいだった。それは僕も嬉しい。
「ねえ、絢斗」
「なにー?」
「……私のこと、無理して『お母さん』って呼ばなくてもいいんだからね」
どうして急にそんなことを言われたのか分からなかったけれど、僕が「お母さん」と言う度に奈々ちゃんが寂しそうな、羨ましそうな顔をするから、もしかしたらそれがきっかけかもしれない。
「じゃあ、さおりちゃん?」
「ふふ、そんなに可愛い呼び方してくれるの?」
笑った沙織ちゃんが、開いたお皿を片手に立ち上がる。
「ななちゃんのお家も大変ね……心配だわ」
「え?」
聞き返した僕に、「何でもない」と眉尻を下げて、今度ななちゃんをうちに連れておいで、と沙織ちゃんは話を終わらせてしまった。
「それでねっ、ななちゃんが……」
「はい、お話はご飯食べてからね。いただきますして」
「いただきます!」
「ほんと、いっつも“ななちゃん”の話ばっかりなんだから」
家で話すのは、大体が奈々ちゃんのことだった。
沙織ちゃんと奈々ちゃんが初めて会ったのは近所の公園で、最近は奈々ちゃんが家に帰りたくないと言うから、放課後によく遊んでいる。
「絢斗がご飯残さず食べられるようになったのも、ななちゃんのおかげだっけね。ちゃんと『ありがとう』って言うのよ」
「うん!」
沙織ちゃんは奈々ちゃんのことが好きみたいだった。それは僕も嬉しい。
「ねえ、絢斗」
「なにー?」
「……私のこと、無理して『お母さん』って呼ばなくてもいいんだからね」
どうして急にそんなことを言われたのか分からなかったけれど、僕が「お母さん」と言う度に奈々ちゃんが寂しそうな、羨ましそうな顔をするから、もしかしたらそれがきっかけかもしれない。
「じゃあ、さおりちゃん?」
「ふふ、そんなに可愛い呼び方してくれるの?」
笑った沙織ちゃんが、開いたお皿を片手に立ち上がる。
「ななちゃんのお家も大変ね……心配だわ」
「え?」
聞き返した僕に、「何でもない」と眉尻を下げて、今度ななちゃんをうちに連れておいで、と沙織ちゃんは話を終わらせてしまった。