ハロー、愛しのインスタントヒーロー
酷く不安定な声が、縋るように言葉を紡ぐ。
「三分だけ、確かめさせて……奈々ちゃんは何もしなくていい、僕が、勝手に」
「絢斗?」
泣いていた。彼の震える喉を、背中を、私は見ていることしかできなかった。
熱い吐息が何度も肩を撫でる。強く食い込んだ指先が痛覚を刺激する。
喚き散らすわけでも、しゃくりあげるわけでもなく、静かにただ堪えるように泣く絢斗を、初めて見て知った。
大人の男の人は、こうやって泣くんだろうか。
そこに「あやちゃん」はいなかった。とっくのとうに、いなくなっていたのかもしれない。
昔と同じようにずっと一緒にいたくて、変わらずにいる努力をすれば、私たちは隣同士、手を繋いでいられると思っていた。
無理なのだ。どんなに足掻いても、変わってしまったものを、変わっていないものとして扱うことはできない。絢斗の気持ちをなかったことにして、一緒にい続けることはできない。
だってさ、絢斗。普通の幼馴染はきっと、ハグなんてしないんだよ。
『私は、絢斗のことを、好きにはなれないよ』
絢斗は分かっていたのかな。私がやっぱり、すぐに嘘をついてしまう人間なんだってこと。
「……絢斗、」
夜風が涼しい。それは多分、体温が上がっているからなんだろう。
「好きだよ」