ハロー、愛しのインスタントヒーロー



「明日から早速来てもらおうと思うけど、大丈夫?」


元々コンビニで週に三日ほど働いていたけれど、ファミレスのバイトも追加することにした。
正直もう勉強も根を詰めてやる必要はないし、一人暮らしのために貯金はしておきたいし、考え事をする時間を極力減らしたい。

店長だと名乗る男性の問いかけに頷き、学校が終わったらそのまま向かいます、と伝える。
ちょうどその時、奥からばたばたと騒がしい足音が近付いてきた。


「てんちょー、またサラダなくなりそうなんですけど! キッチン入って下さい! なるはやで!」

「おい啓介ぇ、俺いま面接中なんだって」

「さっき採用って聞こえた! もう終わったっしょ!?」


ダークブラウンの短髪が真っ先に目に飛び込んでくる。顔を出したのは、いかにも快活そうな男の子だった。
私の視線に気が付いたのか、彼がこちらに向き直る。


「あ、井田(いだ)です! よろしくお願いします」


無駄に声が大きくてうるさいタイプなのかと身構えたけれど、そういうわけではないらしい。爽やかな笑顔が印象的で、人の良さが滲み出ている。


「此花です。よろしくお願いします」

< 171 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop