ハロー、愛しのインスタントヒーロー
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ブランコに乗ったのは多分、小学生のとき以来だ。鎖を握って腰掛けたまま、漕ぐわけでもなくぼんやりと空を見上げる。
八月が終わろうとしていた。
小さい頃によく遊んでいた公園に、一人で居座っている。外はもう暗い。
僅かな風が頬を撫でたと同時、足音が聞こえて、視線を夜空から目の前に戻した。
「……夜に一人でいるのは、危ないよ」
開口一番、少し怒ったように注意をしてきた彼に、大丈夫だよ、と返す。
「絢斗が来てくれるから、一人じゃないし」
私がそんな屁理屈を言うと、絢斗は泣き笑いのような表情で瞬きをした。
「ずるいよ、奈々ちゃん」
ずるくていいよ。私がどんな不正をしたって、絢斗はきっと咎めない。
『お願い。絢斗に、会って欲しいの』
細かいことは何も聞いていなかった。沙織ちゃんも分からないのだという。ただ、絢斗の様子がおかしいということだけは確かだった。
会って欲しいと言われたって、連絡はずっと無視されている。仕方ないから一方的にメッセージを送った。公園で待ってる、と。
――絢斗が来るまで待ってる。
最後にその一文を付け足したのは、もちろん打算的な部分からくるものだった。
「ごめんね」