ハロー、愛しのインスタントヒーロー
さも当然のごとく、彼が的外れなことを言う。
死ねるほど好き、という答えなんて期待していなかった。一緒に生きよう、と言われることがこんなに嬉しいなんて、知らなかったのだ。
「奈々ちゃん、早く!」
部屋を出た絢斗が急かす声に、今行くよ、と口で答えながら、彼の机に近付く。以前から気になっていたものがあった。
『みんなのしょうらいのゆめ』
前にこの冊子をめくっていたら絢斗に止められたけれど、彼の当時の夢が何なのか、私は未だに知らない。
ぺらぺらとページを送っていく。目当ての名前を見つけて、その人の「しょうらいのゆめ」を読んで、思わず笑ってしまった。
「奈々ちゃん? 何してるの? ……って、あ――――――!」
「絢斗、ほんとに変わんないね」
「恥ずかしいから見ないでって言ったのに!」
赤面しながら怒る彼に、ごめん、と軽い謝罪を入れる。
「もう、いいから早く来てよ! じゃないと奈々ちゃんの分のチキン全部食べちゃうからね!」
「はいはい」
大人しく冊子を閉じて元の場所に収納する。
私はやっぱりこの人と一緒に生きていきたい、と実感したのは、騒がしいクリスマスの夜だった。