ハロー、愛しのインスタントヒーロー


落ち着いたトーンで掛けられた日比野くんの問いで、我に返る。
てっきり私に向けたものだと思っていたけれど、彼は続けてこう言った。


「それとも友達? ああ、いや違うかな。だって君、こんなに嫌われてるもんね」


ゆっくり日比野くんへ視線を移す。
彼の目は絢斗を捉えていて、その瞳の冷酷さに少し肝が冷える。無感情の上に乗っかった事務的な笑みと、奥にある僅かな苛立ち。独裁者、という単語がふと頭をよぎった。


「き、嫌われてなんか……」

「しつこい男って嫌われるんだよ。引き際は見定めないと」


ね? と人差し指を唇にあて、妖麗に笑みを深める。学校で見る日比野くんとは、まるで別人だった。

美しさに惑わされてはいけない。彼は多分、今とても怒っている。


「ねえ、此花さん」


その冷たい眼差しが、私を射抜いた。


「俺はさ、面倒くさいこと嫌いなんだよね。面倒事は生徒会の仕事でたくさんだ。用件はなるべく端的にスマートに済ませたいわけ」

「何が言いたいの」


彼の顔から感情が抜け落ちる。しいて言うのなら、そこにあるのは軽侮だろうか。


「――こんなオトモダチがいるなんて聞いてねーんだよ。自分の面倒は自分で片付けろ。俺を巻き込むな」

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