ハロー、愛しのインスタントヒーロー



初めてだから、という言い訳は、さほど意味がなかった。相手は自分の欲に忠実で容赦なかったし、ただ痛みだけが体を貫いていた。

中学二年生の時だ。
家に初めて男の子を入れた。今となっては顔も思い出せないクラスメート。でも当時はそれなりにかっこよく思えたはずで、だから自分のテリトリーへ侵入することを許したのだと思う。

その頃は純粋に寂しかった。帰ってきて誰もいない空間が広がっていることには慣れてしまったけれど、一人で簡単なご飯を作ってみて、失敗して、玉子焼きがしょっぱすぎたくらいで泣いてしまうほどには辛かった。

だから、仕方なかったのだ。

どきどきした。ちょっとだけ、わくわくした。
狭いけどごめんね。そう告げて振り返った唇を、突然塞がれた。

驚いて胸板を押し返しても、逆に押し倒される。
ぎらついた目が怖くて、力強い腕が怖くて、震えることしかできなかった。


「ま――待って! 私、初めて、だから」


大丈夫だよ、と、そんな気休めを言われた気がする。

相手の自分本位な触り方に、最初は抵抗していた。だけれどそれが意味を成さないと悟った途端、急に怠くなって無抵抗を決め込んだ。

痛い。熱い。すぐ近くで荒々しい吐息が聞こえる。

物凄く長く感じた。ようやく終わったと思えば、相手がそのまま抱きつくようにもたれかかってきて、その重さと温さに、久しぶりにぐっすりと眠ることができた。

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