ハロー、愛しのインスタントヒーロー

2:40



カップラーメンは三分。外側の薄い透明フィルムを剥がして、蓋を開ける。
お湯を注いで待つ間、テレビのチャンネルを頻繁に変えた。クイズ番組もバラエティー番組も特に見る気が起きなかったので、画面を消す。

スマホで適当に音楽を流しながら、SNSを巡回していた時だった。

唐突にインターホンが鳴る。
うちは宅配なんて滅多に来ない。夜、しかも平日に母が帰ってくるとは思えないし、そもそも母はインターホンを鳴らす人じゃない。

重い腰を上げて玄関に向かう。ドアの覗き穴からその人物を確認し、うわ、と声が漏れた。


「奈々ちゃん! こんばんは!」


ぶれない笑顔と無駄に大きい声。そこに立っていたのは、言うまでもなく絢斗である。

こないだはっきりと拒絶したのに、何事もなかったかのようだ。普通の人なら確実にもう話しかけてこないであろう態度を取ったはず。
意味が分からない。というか、理解できない。そろそろ絢斗を宇宙人に分類してもいい気がする。


「奈々ちゃん、開けてよ! いるの分かってるんだよ?」

「不審者だって分かってるのに開けるバカいないでしょ」

「不審者じゃないよ!? 飴あげるからおいで、とか言わないもん!」

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