ハロー、愛しのインスタントヒーロー


何を言ってるんだこいつは。
呆れて言葉が出ない。いまどき、小学生だって「飴あげるからおいで」とそそのかされてもついていかないと思う。


「おかず持ってきたよ! いっぱい作っちゃったから奈々ちゃんにあげるって!」


恐らく絢斗のお母さんが彼に持たせたのだろう。
小学生の頃、絢斗の家でご飯を食べるようになったのは、こうして絢斗が私のところにおかずを持って押しかけてきたのがきっかけだった。


「……いらない。帰って」

「えー!? 何で? せっかく持ってきたのに!」

「もうご飯食べたから」


息を吐くように嘘をついた。本当はテーブルの上にカップラーメンが置いてある。

と、ちょうどタイマーが鳴りだして、三分経ったことを知らせた。
急いでキッチンに戻る。


「ねーえー! 奈々ちゃーん! あーけーてー!」


絢斗を放ってタイマーを止めに行っていたら、ますます大きい声でごねだした。しかもそれが近くの住民にも聞こえたらしく、「うるさい!」と怒鳴り声が飛んでいる。

クレームが入ってトラブルになったら面倒だ。ただ面倒なだけではなく、母になんて言われるか分からない。

外はうるさいし、ラーメンは伸びるし。


「あー、もう……」

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