ハロー、愛しのインスタントヒーロー
いや、へへ、じゃなくて。
時刻は十八時過ぎ。家で夕飯を取る前にここへやって来たのだろう。
立ち上がり、食器棚からお椀を一つ持ってくる。
「麺伸びたの、あんたのせいだから」
重量の増したちぢれ麺を半分そこに移して、絢斗に押し付ける。
こんなに伸びてしまったら美味しくないし、一人で食べきるのは結構大変だ。
「え、僕の?」
「責任取って半分処理して。どうせお腹空いてるんでしょ」
ありがとう、と頬を緩めた彼が、お椀を受け取った。なぜお礼を言われたのかは不明だ。
「奈々ちゃん、僕の方、あんまり具が入ってない」
「……じゃあこっち食べな」
「あ、エビいっぱいいる」
そういえば絢斗はエビが好きだったな、とこのタイミングで思い出す。夕飯にエビフライが並んだ時は、ずっとご機嫌だった。
物思いに耽っていると、連鎖反応的に様々なことを思い出しそうで怖かった。いや、もう既に思い出しつつある。
頭の奥に追いやっていた記憶が、嬉しかったこと、悲しかったこと、全てを交えて少しずつ浮き上がってくる。
『正直、もう関わりすぎない方がいいと思うの。絢斗にも何か影響を与えちゃうんじゃないかって――』