ハロー、愛しのインスタントヒーロー
どこまでも冷徹で無慈悲な言い草だった。容易く反駁すれば、心臓や吐息まで冷凍保存されてしまいそうなほど冷え切っている。
「お前はただの幼馴染だ。何にもできやしない。守ってもらってばかりの、非力なあやちゃんだよ」
抵抗し続けていた体から、なけなしの力が抜けていく。否、正確にいえば、抵抗を忘れてしまうほどに日比野くんの言葉は衝撃的だった。
『あやちゃんは、ずっと私のそばにいたらいいよ。そうしたら、なんにも怖くないもん』
――あやちゃん。その呼び名を使っていたのは私だけだ。それも、昔の私だけ。
「どうして、それを……」
引っ掛かる部分は他にもあった。絢斗を私の幼馴染だと断言したこと、初めて知ったのはいつかと執拗に問われたこと。
日比野くんが俯いている。私の手首をきつく締めている手が、震えている。
「“どうして”? ここまできて、まだ分かんないっていうのか……いい加減にしろよ」
震えて、前髪も、その睫毛も、怒りに染まっていた。激情を押し殺すように彼の喉から掠れた声が漏れる。
「俺の顔ちゃんと見ろよ。日比野静嘉。分かんない? ああ、分かんないか。結局お前らは自分さえ良ければ他の奴なんてどうでもいい。今も、昔も、二人一緒に仲良くしてんだから笑えるよなあ」