ハロー、愛しのインスタントヒーロー
思い出せ。思い出さなければ。しずかくんの記憶を。
絢斗がいじめられていたのは鮮明に覚えている。それがきっかけで絢斗といつも一緒にいるようになったから。
でも、しずかくんは? 思い出せない。絢斗としずかくんが一緒にいたことなんて、あっただろうか。
「絢斗がいじめられてたら、必ずあんたが割り込んでくる。だから、あいつらは絢斗じゃなくて俺に戻った。あの日だって、あんたがちゃんとやって来たんだ」
「あ……」
いたかもしれない。確かに、あれは校庭で絢斗がいじめられていた時だった。
トイレに行ってくるね、と言ったきり帰ってこない絢斗を探して、私は昼休みに校庭まで出て行った。
花壇の近くを通りかかった時、その声は聞こえたのだ。
『あ、あやとくんをいじめないで……!』
物陰からこっそり様子を窺うと、そこには絢斗を背に庇って、必死にいじめっ子に立ち向かっているしずかくんがいた。
『しずかがしゃべったー』
『いじめないでぇ、だって』
『なんでおまえが泣いてんだよ、かっこわる~』
絢斗もしずかくんも泣いていた。
私は咄嗟に駆け寄って、「何してるの」といじめている男子たちを威嚇した。
『げっ、あやとの姉ちゃんがきたー』