ハロー、愛しのインスタントヒーロー
彼の瞳に揺れるのは、怒りだけではない。悲しみに似た嘆き。なぜ、どうして、と終わりの見えない暗闇に問い続ける無力感。
皮肉にも、その時初めて、日比野くんの中に「しずかくん」を見たような気がした。
「いじめてた奴らと大差ない。いや、むしろお前らの方がタチ悪い。無視して、見て見ぬふりして……俺を知ったのが一年前? ふざけんなよ。全部、全部なかったことにしやがって!」
「しずかく、」
「黙れよ! その名前で俺を呼ぶな! 久しぶりに会ったら相変わらず二人一緒、まじでふざけんなよ、お前らだけでお幸せに、とか許せるわけねえだろうが」
俺を見捨てて、忘れたくせに。
わなないた彼の唇が、そう告げた。
『許さないから。私を置いてって、一人にして、絶対許さないから!』
私が絢斗にぶつけた怒りと、全く同じ種類のもの。
手に取るように分かる。知っている。悲しいのに、それを怒りに変換しないと消化できなくて、その奥にある感情に蓋をしてしまう感覚。
そうさせてしまった私が、分かるよ、なんて、言えるわけがないけれど。
「お前らだけは、傷ついて、ずたずたに引き裂かれればいいんだ」