ハロー、愛しのインスタントヒーロー
あと2分が待ち遠しい
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予兆、なんてどころではない。兆候、予感、どれもなまぬるい。
父と母の間には歪みがあったのだと思う。それも、取り返しのつかないほど大きな歪みが。
気が付いた時には既にそうだったから、何が原因なのか、どうすれば改善されるのかはよく分からなかった。そもそもそれが当たり前だったし、正そうとも思わなかった。
母は十六歳で私を産んだ。高校には行っていない。行くことができなかった、と表現した方が正確だ。
私を身籠った時、堕ろしなさい、と周囲に強く促されたけれど、反対を振り切って出産したのだと言う。その際に母の方は親と縁を切り、父と二人で暮らし始めたらしい。
全部後になって聞いたことだから、小さい頃は事の重大さを理解していなかった。
ただ漠然と、両親はいつも大声で言い合っているな、とか、母は怒ったり泣いたり忙しいな、とか、そんな程度だ。
父と母の関係が悪化していた頃、ちょうど絢斗とよく遊ぶようになった。
家に帰ると二人の喧嘩が待っている。帰りたくない、と言う私に、絢斗が「じゃあ僕と遊んで」と手を引いてくれることが常だった。
「絢斗! 何してるの!」