ハロー、愛しのインスタントヒーロー
夕方の六時過ぎ。公園で遊んでいると一人の女性がやってきた。
沙織ちゃんと会ったのはそれが初めてで、絢斗が彼女のことを「お母さん」と呼ぶまで、絢斗の母親なんだということが分からなかった。それくらい、絢斗と沙織ちゃんには類似点が見いだせなかったのだ。
そう、絢斗はまだこの時、沙織ちゃんのことを「お母さん」と呼んでいた。いつからだろう、沙織ちゃん、なんて呼ぶようになったのは。
小学生の帰宅時間はとうに過ぎており、なかなか帰ってこない絢斗を心配し、彼女はここまでやってきたのだろう。
「ななちゃんと遊んでた!」
絢斗の言葉を受けて、沙織ちゃんが私へ視線を向ける。それからすぐに「ああ」と表情を和らげた。
「ななちゃんね。いつも絢斗と仲良くしてくれてありがとう」
家で絢斗が私のことばかり話すから、彼女も知っていたらしい。
優しく笑った沙織ちゃんだったけれど、急に怖い顔をして腰に手を当てた。
「でもね、もう六時だよ。暗くなってきたでしょ。危ないから、時間はちゃんと守らないとダメ。ななちゃんのお母さんとお父さんも心配してるよ」
「……心配なんてしてないもん」