公認ラヴァ〜それでも愛してる〜
ピンポーン



来客を告げるチャイムがなる

「賢也、悪いけど出てくれる」

足を椅子に引っかけながらかろうじて立ち上がると賢也は玄関に向った。






茶封筒を手にリビングに戻って来た賢也の顔は蒼白だった。

力なく椅子に座る賢也に鋏を渡す
「開けて中を確認して」

何も言わず、開封すると書類を取り出し「示談書・・・」と一言呟くと内容を黙読し始める。

示談書を持つ手が震えカサカサと音がなっている。

第一条乙及び丙は甲に対して、乙と丙が不貞行為を行った事について真摯に謝罪し、甲の離婚の申請に対して無条件で承諾すること。

第二条乙は甲に対して金弐百萬圓の支払いをするものとする、ただし一括のみとする。

第三条・・・・・・・・

私は条文を読み上げていった。

「別れたくないんだ、お願いだ」

「どうして?私と別れて大森恵美と結婚する約束までしているでしょ?」

「そ・・そんなことはしていない」

私は黙ってパソコンを操作すると一つの音声ファイルを再生する。

「ねぇ、離婚はいつ成立するの?」

「あぁ妻がなかなか承諾してくれなくて」

「お前みたいなつまらない女はいらないって言ってさっさと判子を押してもらったら、性の不一致って言って」

「それだけじゃ離婚の理由にならないだろ」




「これは・・・」

「ごめんなさい、あなたが彼女の部屋に行った日にベルトの裏に盗聴器を付けさせてもらったの。離婚が待ち遠しかったんでしょ?」

「違うんだ・・・」

「離婚を承諾してもらえない場合は訴訟をおこないます。その時はこのデータは提出できないのでもう一つ用意してます」

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