公認ラヴァ〜それでも愛してる〜
大森さんの部屋で会う日は、待ち合わせのためのフードコートには行かず直接マンションへ向う。
彼女の部屋に行ったときに感じた違和感、
初めて関係を持ったとき、帰りの電車が一緒だった、しかし実際は彼女の部屋は反対方向だった。
始めからオレは彼女にハメられていたのかもしれないが、それにのってしまったのはオレ自身だ。

もう二度とこの駅で降りることはないと決心をして改札を抜けると、背後から腕を絡めてくる人がいた。
振り返るひつようはない、キツい香水の香りでそれが大森さんであることが分るから。

「賢也くんの方がちょっとだけ早かったね、でも追いついてよかった」

「ああ」

「一週間が長かった、LINEとかダメっていうし、でも賢也くんも我慢してるんだから私も我慢しないとね」

正直大森さんのことが怖くなってきている。
まるでオレと大森さんが恋人同士であるかのような振る舞いをする。
オレにはそんな気は全くないのに。

大森さんはドアノブに鍵を差し込みながら
「やっぱり、賢也くんに合鍵を渡しておこうか?いつでも来られるように」

「いや、必要ないだろ、それに彼氏だって鍵を持ってるんじゃないのか」

「ふふふ冗談よ、先に入っていて」

何度か来たことのある広めの1ルームの部屋は部屋サイズに見合わないダブルベッドと、大型テレビがほとんどを占めていて、まるでラブホテルだ。

どう切り出そうか悩んでいると

「賢也く~ん、見て」
声を掛けられ振り向くと、レースのような素材で素肌が透けて見えるランジェリーに身を包んだ彼女が近づいてきた。
きっと有佳がこんな感じのを付けたら可愛いだろうなと考えると複雑な気持ちになった。

「賢也くんの為に買っちゃった、似合う?」

「ああ、似合うよ」
何を言ってるんだ、そんなこという必要はない、だから勘違いされる。

「今日は・・・」

「一週間分、はやくしよう」

ダメだとおもいながらも、今日で最後にするつもりでスーツも脱がずにそのまました。

「スーツの賢也くん格好いいから興奮しちゃった」

「あのさ、本当のところ彼とはどうなってんの?」

ベッドに座り頭を抱えていると、彼女は背後から抱きついてきた
「気になる?嫉妬した?それなら」
「ねぇ、離婚はいつ成立するの?」

どうする・・まずは大森さんの恋人の事を聞き出したい
「あぁ妻がなかなか承諾してくれなくて」

「お前みたいなつまらない女はいらないって言ってさっさと判子を押してもらったらいいじゃない、性の不一致って言って」

うるさい、有佳をつまらないとかお前が言うな
「それだけじゃ離婚の理由にならないだろ」

「奥さんの写真って無いの?」

お前に見せられるわけ無いだろう、別れたら何かされたら困る。有佳はオレが守らないと
「無いから見せられないよ」

「人に見せられないくらい不細工なの?不細工でエッチもつまらないなんて賢也くんが可哀想」

有佳を悪く言うな・・・やめてくれ

「もう一回しよ」

もう無理だ、今日は帰って連絡を無視すればいい。何を言われても相手にしなければいい
「いや、そろそろ帰らないと」

「だ~め、週に一回しか会えないんだから。もう一回してくれなかったら先にわたしが奥さんに言いに行くけど」

やてくれ、どうすれば


引き離そうとしても、彼女のねっとりと絡みつく舌技にまた溺れてしまう。
「あっ、だめだ・・・帰らないと、やめっ・・・んっ」

これで最後だ

最後にするんだ

「あああっ賢也くん、いい」



ぐったりと横たわる彼女をベッドに残し、着衣を直す。

「ねぇ、賢也くん来週も部屋でしよう」

「もう、やめよう。君は彼の元に戻って、オレは家庭に戻る」

大森さんは慌てて起き上がってすがりついてきたその手を思い切り払った
「賢也・・・くん・・・」

「オレは離婚する気はない、妻を愛してるから。お互い楽しんだのだからもう潮時だよ」

「桑原部長に言いつけるわよ」

「いいよ、もうこれ以上妻を騙すのは苦しいんだ。じゃあ、これでさようなら」

大森さんがなにかを叫んでいるがもう何も聞かない。
いそいで、部屋を出た。

もう二度と、間違いを犯さない。
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