あやかし戦記 奪われた愛の形
レオナードたちの役目は、山のどこかにいるであろう巨人を呼び、村の近くまで連れて行くこと。所謂囮というものだ。巨人を相手にするのだから当然危険である。だが、レオナードたちは自ら進んで囮になることを選んだのだ。

「だって、あんなクズを前にしたら今度こそ殴りそうだし」

「僕も我慢できる自信はないです。イヅナがいたので我慢しましたが」

休憩をしながらレオナードとヴィンセントは、何故イヅナたちと同じチームにならなかった理由を話す。今回は二つのチームに分かれて行動しているのだ。

「そんなにすごい人なんだね」

話を聞いたエイモンが驚き、チターゼは顔を顰める。アレンはどこかホッとしたような顔をしていた。

「囮チームでよかったかも!」

アレンがそう言った刹那、遠くから「うぁぅぅぁぅぅぅう」と呻き声のようなものが聞こえてくる。レオナードとヴィンセントは顔を瞬時に見合わせた。あの巨人のものだ。

「エイモンさん、チターゼさん、アレンさん、巨人はすぐ近くです」
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