あやかし戦記　奪われた愛の形
フジという女性は存在していた。ツヤがこっそり屋敷の蔵を調べたところ、フジの戸籍が書かれた書物があった。フジが働いていた家というのは、トヨトミ家だったのだ。

フジを殺され、フジを愛した証であるダイヤモンドのネックレスを奪われた巨人ーーーダイダラボッチは怒り狂い、ダイヤモンドのネックレスを返してもらうよう地震を起こし続けていた。だがそれを、ムサシたちは無視していたのだ。

イヅナが山道を走って行くと、「イヅナ！！」とレオナードたちの叫ぶ声がする。前方から、傷を所々に作りながらレオナードたちが走ってきた。その後ろにはダイダラボッチがいる。

「ダイダラボッチ、ダイヤモンドのネックレスを返します！これはあなたが人を心から愛した証です！」

イヅナがダイヤモンドのネックレスを掲げると、ダイダラボッチの動きがピタリと止まる。それはまるで驚いているように見えた。イヅナは近づき、ダイダラボッチの手の上にネックレスを渡す。しばらくすると、ダイダラボッチの目から大粒の涙が溢れ出した。

「うぅぅぅううぅぅぅうぅぅぅう！」

泣き続けるダイダラボッチの体が、ゆっくりと岩になっていく。だが、その表情はとても穏やかで優しいものだった。
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