禁忌は解禁された
「ごめんね、突然……」
「ううんー!一颯に会えるなら、いつでも大歓迎!!」

一颯は暁生を誘い、二人でランチに来ていた。
もちろん井田も近くの席に座り、コーヒーを飲んでいる。

「暁生くん、あのね……?」
「うん」
「私━━━━━」

「何を言われても、簡単に諦めないよ!」

「暁生くん……」
「“私は、颯天が好きなの!颯天しか考えられないの!!”だろ?」
「う、うん…」
「そんなこと、わかってるよ!」
「だったら……!」

「一颯が何を言っても、無駄!!」

「え……?」
「そんなことより!早く、食べよっ!!
一颯、何がいい?なんでも、食べさせてあげるよ?」
「ダメだよ。自分の分は自分で払うよ」

「ほんっと、ガード固いよねー!
ガチガチは、良くないよ?もっと、ユルーくいこうよ(笑)!」
笑いながら言った暁生に、一颯はキッと表情が固くなる。

「逆なら、嫌だから」
そして、真っ直ぐ暁生を見つめて言った。

「…………………本当に、一颯は颯天“だけ”なんだなぁー」
暁生が頬杖をつき、ため息混じりに言った。

「ごめんなさい…」
「羨ましいなぁ、颯天。こんなに一颯に思われて……」
「そんな…こと……」

「でも、不満はないの?」
「え………?」

「颯天は仕事とはいえクラブに行ってるのに、一颯は屋敷に縛り付けられて出かけるのも騎士付き。
しかも、必ず颯天の許可がいるんだろ?」
「うん…」
「一颯は、颯天の人形じゃないよ?」
「うん、そうだよ」
「でも……颯天の支配下にあるじゃん!」
「いいの。私、一人じゃ何もできないし……」

「それは、親父さんや銀二さんが何もさせなかったから。その事だけは、親父さんのこと尊敬できないんだよねー
銀二さんも、凄かったもんなぁー!」
「え?」
「いつも一颯にくっついて、番犬みたいに一颯に寄ってくる奴を追い払ってた。颯天も凄かったけど、銀二さんもヤバかった。
ちなみに!井田も、そうなりつつある」
「え?井田くんが?」

暁生が、井田に視線だけ向けた。

井田が凄まじい目で、暁生を見ていた。

「一颯、もう少し周りを見た方がいいよ?」

「え?」
「一颯の周りには、番犬が多すぎる!」
「え?え?」
「まぁ、俺は負けないけど………!」
「暁生くん?」


「…………………ってことで一颯、デートしよ?」

「え━━━━━」
一颯の手を取った、暁生。
井田の席に向かう。

「ちょっと、一颯を貸して?」
「は?ダメに決まってます!だいたい、今日のことも組長には内緒で来たんですから!」
「そうなの!颯天が知ったら、井田くんが怒られちゃう!」
「姫、俺のことはいいんです。
暁生さん、怒られるのは姫です!姫を傷つけることはしないでください!」


「じゃあ……颯天に俺から連絡する!
それならいいよな?」
< 10 / 85 >

この作品をシェア

pagetop