禁忌は解禁された
「一颯!!」
部屋に入ると“いつもの”颯天と銀二がいた。

きっと……一颯が来るから、気を遣っているのだろう。

「ごめんね、急に……」
「ううん~!一颯に会えるなんて、嬉しいし!」
そう言った颯天は、一颯を抱き締めた。

「姫、こちらへどうぞ!」
銀二がソファに促した。

「うん、ありがとう」
颯天と並んでソファに座る、一颯。

「それで?どうしたの?俺に会いたいなんて……」
一颯の顔を覗き込む。

「あのね……」
「うん」
「あの……」
「ん?一颯?」

「姫?」
銀二も、一颯の足元に跪き顔を覗き込む。

「一颯!」
「え?暁生くん…」
「やっぱり、俺が言う」
なかなか話せずにいる一颯を見かねて、暁生が颯天に声をかけた。

「暁生、何だよ……!?」

「颯天、俺が言ったこと覚えてるよね?」

“俺には颯天から一颯を奪えない”って思わせて?”
颯天の頭に、暁生の言葉が蘇る。

「あー、うん」

「だからね。
俺を、颯天組長の部下にして?」

「…………は?」
「暁生さん、何言って……!」
銀二や井田も驚いている。

「俺が勤めてるクラブ、知ってるよね?」
「あぁ」
「俺、そのクラブのオーナーになったの。
街のトップの売り上げだって知ってるよね?」
「あぁ」
「そのクラブもあげるよ。その街を仕切ることが出きれば、神龍組はもっと上に行けるよね?」

「なんで?」
「ん?」
「なんで、組に入りたいの?」

「一颯の傍にいたいから」

「だったら、入る必要ないじゃん!
今日みたいに“勝手に”一颯に会いに来ればいいだけの話だろ?
…………………まぁ、もう簡単に会わさないけど……!」

「…………だったら、颯天」
「何だよ」
「一颯を返せよ……!」
「は?」
「元々は、お前が俺から一颯を拐ったんじゃねぇか!!」

「は?拐っ…た…?」

「暁生くん!!その話はやめて!!」
弾かれたように、暁生を見る一颯。

「どうゆう……こと…?」
颯天が信じられない思いで、暁生を見ている。


「一颯は、俺の元恋人だ………!」


「━━━━━━は?」
「俺が、一颯に全部教えた!
一颯にとって、俺が、全部初めての男だ」

━━━━━━━!!!!?
その瞬間、颯天は暁生に殴りかかっていた。

「颯天!!!?やめて!!」
「組長!!?」

「颯天は、考えたことなかったのか?」
「あ?」
「一颯に元彼がいたこと」
「考えたくねぇよ……」
「お前が……俺から、奪ったんだよ……!?
だから俺には、お前から奪い返す権利がある。
言ったろ?
“俺には颯天から一颯を奪えない”って思わせろって!
だから、一颯の傍にいたい。
━━━━━━━━それが、俺の覚悟だ!」
< 15 / 85 >

この作品をシェア

pagetop