禁忌は解禁された
「そうかな?」

「ほら、若も井田もイケメンだから!
姫と並ぶと、様になるんすよ!」
「フフ…そうだね。時々、井田くんが旦那さんって間違えられるんだよ!」
「そうなんすね!」
「いいなぁ、井田は!」

「え?」
「俺も、間違えられたい!」
「だよなぁ~」

井田は何とも言えない気分で、話を聞いていた。

とにかく綺麗で、可愛らしい一颯。
誰もが一颯に憧れ、好意を抱いている。

中でも銀二と井田は一颯に、特別な想いを抱いているのだ。

部屋に戻った一颯。
スマホを片手に、庭に出た。

「もしもし?志乃?」
『一颯、さっきはごめんね…変なこと頼んで……』
「ううん。でもどうして私まで?
だいたい既婚者が、合コンなんて……」
『職場の同僚に、一颯の写真見られちゃったの……
それで、どうしても会わせてほしいって聞かなくて……もちろん、既婚者ってことは言ってるよ!
でも、合コンってゆうか……4対4で食事しよってことになって、どんどん話が進んじゃって……』
「そう……じゃあ、普通にお食事に行くって颯天に話してみる!いつなの?お食事」
『明後日』
「明後日かぁ…颯天、お仕事お休みなの……
でも、颯天にお願いしてみるね!」

「何をお願いするの?」
「ひゃぁ!!?」
突然、後ろから抱き締められ、耳元で囁かれた一颯。
思わず、変な声が出る。

「ひゃぁ!だって!可愛い~!!」
「は、颯天!!?」
「ただいま!こんなとこで何してんの?風邪引くよ?」

『もしもしー?一颯ー?』
「あ、ごめんね!志乃、またかけるね!
颯天、お帰りなさい!」
通話を切り、颯天に向き直る一颯。

「うん。で?何を俺にお願いしたいの?」
「志乃達と、お食事に行きたいの」
「いつ?」
「明後日」
「明後日……あ!俺、休みじゃん!」
「うん、そうだね」
「ダメだよ!俺は、仕事以外で一颯と離れないよ」
「でも、行きたい」
「ダメ!!」
「どうして?」
「だから!離れたくねぇの!!」
「いいでしょ?お食事くらい」
「ダメ!!」
「………」

一颯は無言で、部屋に戻ろうとする。

「一颯!!」
「颯天とお話しない!」
「は?」
「だから!颯天と話したくない!」

「一颯!ふざけ━━━━━━い、一颯……?」
一颯の手を掴み、自分の方に向かせる颯天。
一颯は泣いていた。

「颯天は勝手だよ……」
「一颯…」
「どうして、颯天の許可が必要なの?
私のこと、信用できないの?」
「違うよ」
「もう少し、気軽に志乃達に会いたい」

「…………わかった」
涙目で訴える一颯に、颯天はそう言うしかなかった。
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