禁忌は解禁された

そして食事会当日━━━━━━

｢じゃあ、一颯。後から行くから｣
｢う、うん…｣
｢銀二！“くれぐれも”頼むわ！｣
｢はい｣

颯天が出ていき、一颯も準備をして玄関に向かう。

｢姫｣
｢お待たせ｣
｢その格好で行かれるんですか？｣
｢うん。変？｣
｢いえ。とても可愛らし……あ、いや…お似合いですよ｣
｢だったらいいよね？｣

｢姫！！車の準備できたよ！｣
暁生が呼びに来る。
｢うん！｣

｢暁生！！｣
｢はい？｣
｢敬語！！｣
銀二の鋭い視線と言葉。

｢あ、はいはい！姫、行きましょう！お手をどうぞ？｣
｢うん…｣
暁生は呆れたように息を吐いて、一颯に手を差し出したのだった。

一颯と暁生の後を銀二がぴったりくっついていき、その姿を見ながら井田が呟きついていく。

｢極端な二人だな……｣
固すぎる銀二と、緩すぎる暁生。

｢姫、板挟み可哀想……｣

車に乗り込む、一行。
暁生が運転し、助手席に井田が座った。

｢姫、お隣宜しいですか？｣
｢うん、どうぞ？｣
一颯に断りを入れ、銀二が隣に座った。

ゆっくり、車が走り出した。
｢なんか、不思議な感じだね！｣
｢そうですね！｣
｢隣に颯天以外がいるなんて初めてだなぁー｣
｢なんだか、畏れ多いです…｣

｢もしかして、銀くん｣
｢え？｣
｢緊張してるの？｣
｢え////いえ…｣
｢緊張してるぅー！銀くん、可愛い～！｣
銀二の顔を覗き込んで言う、一颯。

｢姫！からかわないでください！｣
｢フフ…可愛い～｣

((若が、遊ばれてる…！))
と思う、暁生と井田だった。

会場に着き、銀二が後部座席のドアを自分で開け降りる。そして一颯に手を差し出した。
｢姫、どうぞ？｣
｢うん｣
手を握ると、引っ張られ銀二の胸にぶつかった。

｢ひゃっ！！？ご、ごめんね！｣
｢いえ……姫、何があっても、俺から離れないでくださいね…！｣
一颯が胸にぶつかった拍子に、銀二はそう耳打ちしたのだった。

｢一颯、暁生！こっち！｣
志乃に呼ばれ、一颯は駆けていく。

｢暁生｣
暁生もそれに続こうとすると、銀二に呼び止められた。
｢はい？｣
｢いいか。俺が言ったこと━━━━━━｣
｢わかってますよ！｣

【今回は“特別に”食事会許可してやる。
その代わり、姫から決して離れず、尚且つ！姫を俺の視界に常にいれておけ！】

｢ある意味、颯天より支配欲求強っ！｣
｢あ？何か言ったか？｣
｢いえ。じゃあ、行ってきます｣

｢一颯ちゃん！｣
｢やっと、一颯ちゃんが出席してくれたー！｣
宮原と伊敷がいて、声をかけてきた。

一颯、志乃、暁生、宮原、伊敷は、いつも五人でいた。
一颯が神龍組の娘だと言うことは、大学の入学式で既に広まっていた。
それを知っても、変わらず仲良くしてくれたのが、宮原と伊敷だ。
(志乃と暁生は幼なじみなので、ずっと一緒)

｢あいつ等……｣
｢確か、井田の同級生だよな｣
｢はい。高校の時です。あいつ等、学校の不良でいつも警察沙汰起こす奴等で……
俺はいつも喧嘩売られてたんです｣
少し距離を置いて、一颯を見守る銀二と井田。

二人の周りのオーラは、かなり黒く染まっていた。