禁忌は解禁された
これには、知衛も目を見開いている。

「颯天を引き取るって時に、父と母が“全て”話してくれました」
「え?姫、それって……」

「うん。井田くんも聞いて!」


18年前━━━━━━━━
当時、一颯は13歳。

「一颯、大切な話があるの」
律子のいつになく真剣な表情(かお)

「ん?」
「神矢のおじ様のこと、覚えてる?」
「うん!お父さんとママの親友のおじ様でしょ?
颯天くんが生まれてから、会ってないなぁ」

「さっき、交通事故にあったの……」

「え………
どうゆうこと!?」
「颯天くんは、一命を取り留めたけど……」
「じゃあ……おじ様とおば様は……」
律子が首を横に振る。

「そんな……」
一颯の目が潤み出す。

「パパがもうすぐ帰ってくるから、パパとママの話を聞いてほしいの」


颯太が帰ってきて、一颯は二人から衝撃の事実を聞く。

「神矢 天馬さんは、ママが本気で愛した方。
でもね……天馬さんはとても恐ろしい方で、時々ママはあまりの恐ろしさで一緒にいられなくなる時があったの。そんな時にパパ……颯太さんにいつも、慰めてもらってたの」

「じゃあ…私は……」

「それは違うわ!!」
「ママ…」
「ママじゃ……天馬さんの傍で支えられないと思った。
あの方を支えられるだけの“覚悟”がママにはなかった。だから、颯太さんと一緒になったの」

「一颯、お前は俺と律子が愛し合ってできた子だ!」

「それでね。颯天くんだけど……」
「うん」

「できれば、俺達の子どもとして育てたいと思ってる」

「天馬さんの大切な息子さんだし」
「天馬の願いでもあるんだ」

「え?」

「“俺にもし何かあった時は、織枝(おりえ)(颯天の本当の母親)と颯天をお願いしたい”ってな。
あいつは……天馬は、普段はとてもおとなしい奴なんだが、キレると見境がなくなってただ機械みたいに相手をなぶるんだ。反撃さえも許さない。
………………理性が消えてなくなるんだ。
だから天馬はそうなった時、織枝と颯天を守れないかもしれないと心配していた。
…………どんな理由があったにせよ、俺は天馬の女を奪った。
天馬は律子の思いをわかってくれたし、俺にも“律子を頼む”って言ってくれた。
でも本当は、天馬自身が律子を幸せにしたかったに違いない。だからせめて俺は、颯天を立派に育てたい!」


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「だから私のことも颯天のことも、父と母はちゃんと愛してくれてました。きっと、父と母が本気で颯天を愛してたことは、颯天自身がわかってるはずです。
おば様のことも、おじ様はちゃんと愛してました。
おじ様とおば様のことも私は、はっきり覚えます。
颯天が生まれた時、本当に幸せそうだった。
二人が亡くなった交通事故も、おば様が颯天を守って、そのおば様と颯天をおじ様が守るようにして亡くなってたって言ってました。
だから真実は違います!
貴方がたが、言ってるようなことは間違いです!」

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