禁忌は解禁された
「笑った顔、似てるよ!
あ!写真が確か……
私は、おじ様の笑顔しか知らないの。お父さんやママは恐ろしいって言ってたけど、正直……ピンとこない。
口数が多い人じゃなくて、お父さんやママやおば様と五人でお食事してた時、ほとんどママとおば様が喋っておじ様は微笑んで見守ってた。
あ、そう言えば………」
「ん?」
一枚だけあった写真を、颯天に見せながら話す。

「颯天が生まれた時だったかな?
一度だけ、抱き締めさせてって言われたことがあるの。その時、震えてた。顔が見えなかったけど、なんだか切なかったの覚えてる」

「そう…」
「今思うと、もう…私に会うつもりなかったんじゃないかな……?颯天が生まれて、颯天に捧げるつもりだったのかも?」
「……………俺は、ほんとに全く覚えてないんだ。
親父と母さんの子って、全然疑ってなかったし。
まぁ…そもそも疑ってたら、禁忌を悩むことなかっただろうし!」
颯天は写真をなぞる。

「颯天…?」
「でもなんか……懐かしい……」
「うん…」
「一颯」
「ん?」

「ギュッてして?」
「うん」
一颯が颯天を抱き締める。
颯天は震えていた。

颯天が泣いている━━━━━━

一颯はゆっくり颯天の背中をさすっていた。


「ンンン……颯…天…待って……」

一颯の口唇を貪りながら、服を脱がそうとしていた。
「やだ!今すぐに、一颯を抱きたい!」
「もうすぐ…夕食…の…時間……」
必死に抵抗しながら、颯天から逃れようとする。

「フフ…一颯、可愛い……
いいよ、もっと暴れて?
…………なんか、益々興奮する……!」
「お願…やめて……」
「可愛い…一颯、好きだよ…大好き……」
「んぁ…や……」
「一颯は?」
「…き……大…好き」

繋がり、一颯の顔を覗き込む。
「一颯、俺を見て?」
「んんっ…!!は…やて……」

「ちゃんと、見ててね…
一颯は今、誰に抱かれてるか……
一颯が愛しているのは、誰か……
誰が一颯を愛しているのか……見てて…ちゃんと…
……………一颯…俺を一人にしないで…?」

颯天の切ない声が響いていた。


「あー、腹減った……」
夕食も食べずに夢中で一颯を抱いた為、颯天は一人キッチンへ向かっていた。

「あ、組長!」
「お疲れ様ですっ!」
「あ、もしかして腹減ったとか?」
キッチンには銀二、井田、暁生がいて、颯天の存在を認めるとバッと立ち上がり頭を下げた。


「お前等こそ、どうしたの?
…………って、飲んでたんだ!」
テーブルの上の酒とつまみと煙草を見て言った。

「組長も、食べますか?」
暁生が声をかけた。
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