禁忌は解禁された
颯天の嫉妬
明朝の朝食中━━━━━

「颯天」
「ん?」
「今日、何時に帰ってくる?」
「え?そうだなぁー」

「今日は19時には帰れますよ?」
銀二が答えた。

「今日の夕食、外食しない?」
「うん、いいよ。でも急にどうしたの?」
一颯の頬に触れ、撫でた颯天。

「その時に、一緒に食事したい人がいるの。
颯天が一緒だったらいいかなって!」
「ん。誰?」
「高校生の時のお友達。
……って言っても、一年間だけなんだけど。高校二年生になってすぐ、転校しちゃって!」
「わかった!いいよ」
「フフ…良かったぁ!ありがと、颯天!」


「ちなみにどんな女?」
「は?女?」
仕事に出る為、玄関で見送っていると不意に颯天が言ってきた。

「うん。今日、一緒に食事をするダチ」
「女性じゃないよ。男性だよ」
「………」
「………」
「……は?」
「え?」
「男?」
「うん」
「ダチっつったじゃん」
「うん、お友達だよ」
「普通、女って思うだろ?」
「そうかな?」
「男ならダメだよ」
「は?颯天、いいよって言ってくれたでしょ?
それに、颯天も一緒だからいいでしょ?」

「なんで、俺が一颯の男友達と会うんだよ!?おかしいだろ!?普通」

「高校二年の時から、ずっと会ってないから会いたいの!」
「はぁぁ!?男に!?」
「そんな言い方しないで!!颯天が思ってるような事じゃないの!!男性だけど、お友達なの!!
颯天の事も、紹介したいし!」

「………一颯、バカだろ…!?」

「なっ…!!!!?ば、バカ!!?」
一颯は頭に一気に血が上り、顔を真っ赤にする。

「うん。だって、男に会うなんてこの俺が許可するわけないじゃん!わかりきってるだろ?
それなのに、会いたいなんて……!
だから、バカっつったの!」

「………」
「…てことで、外食中止!!」

「颯天」
「ん?」
「嫌い!!!」
「あ?」

「颯天なんか、大!嫌い!!!」

「だいき、らい…?」
颯天の動きが止まる。
一颯は、顔を真っ赤にして颯天を睨みつけていた。

そして一瞬で、颯天を包む雰囲気が闇に落ちたように黒く染まった。

銀二始め、部下達に緊張が走る。

颯天は一颯の顎を掴み、顔を近づけた。
「ねぇ、今、何っつった?」
「ちょっ…颯天!痛い!」
「なんか、大嫌いって、聞こえたんだけど……空耳だよな?」
「え……颯天……?」

「そんなわけないよな?一颯と俺は、愛し合ってるんだから!一颯が俺を、嫌いなんてあり得ねぇ……
しかも“大嫌い”って……え?え?今、なんでそんな言葉が聞こえたんだろ?
俺、一颯のこと好きすぎるから、おかしくなったのかな?」
「はや…て…」
一颯は、次第に身体が震えてくる。

「ねぇ…一颯、言って?」
「え?」
「颯天、好きって」
「え?」

「一颯にそう言ってもらえないと、俺は死んでしまう。
何も手につかなくなる。
ほら、言って?
このキスしたくなる可愛い口で、俺の大好きな声で、いつもみたいに!
“颯天、大好き!”って!!!!」

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