禁忌は解禁された
「あ、ごめんね!颯天、なるくん、入ろ?」

「いぶちゃん、あの人達はいいの?」
徳仁が、カウンターに座る銀二と井田を指差し言った。

「あ、いいの。
銀くん達も一緒に食べたいけど、嫌がるから」

颯天が煙草を取り出した。
「何飲む?一颯」
「あ、先になるくんに選んでもらわないと!
それに!煙草!!なるくんに吸っていいか聞かなきゃでしょ!?」
「は?なんで?」
「なるくん、苦手かもしれないでしょ?」
「なんで、こいつばっか気にすんの!?一颯は俺のなのにぃ!!」
「は?気にするに決まってるでしょ?なるくんに会いに来てるんだから!」

「あ、いぶちゃん!僕も吸うから、大丈夫だよ?」
「え……なるくん、煙草吸う…の…?」
「うん…ダメかな?」
「あ、いや、そんなこと……」
「僕はもう……いぶちゃんの思ってるような男じゃないよ」

そう言って、徳仁は煙草を吸い出した。
その姿があまりにも、一颯の思い出とかけ離れていた。

高校生の頃の徳仁は、穏やかで正義感が強く、頭の良い…まさにヒーローのような男子だった。
高校に入学して暁生と志乃とは組が離れてしまい、一人寂しくしていた一颯に、声をかけて気遣ってくれたのが徳仁だった。

神龍組の娘だとすぐに広まり、誰も近づいて来ない中……徳仁だけはいつも気にかけてくれたのだ。

それは一颯にとって、かなりの救いになったのだ。
ある意味、一颯の初恋といってもいい程、徳仁に憧れていたのだ。

「…………なるくん、高校生の時は本当にありがとう!
お礼、言えないまま離れちゃったから…」
「ううん」
「これ、お礼に受け取ってくれない?」
「僕に?ありがとう!開けるね!
……………へぇー!ボールペンかぁー!ありがとう!
大切に使うよ!」
嬉しそうに、顔を綻ばせる徳仁。
一颯も自然と笑顔になる。


「━━━━━━へぇー、とっても仲が良い姉弟だったもんね!でも、あの可愛い男の子がこんなにイケメンになってるなんて……!」
颯天と一颯の近況を伝えた一颯。
「なるくんは?」
「……………僕は、一応経営者だよ!
……って言っても、立ち上げたばかりだけど!
おもいきってこっちに出てきたんだ……」
「凄い!!社長さんなんだ!」

「は?俺は!組長!!」
「え?」
「俺の方が凄いもん!」
「颯天、張り合わないの!」

「フフ…可愛いね、颯天くん」

「は?可愛い言うな!!」
「フフフ…」
「お前、キモいよ!」
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