禁忌は解禁された
「お前、本性現せよ」
「え?」

一颯がトイレに行った為、颯天が徳仁を鋭く見つめて言った。

「会社の経営者って、決してまっとうな会社じゃねぇだろ?」
「フフ…神龍組の組長に言われたくないよ。
てか、知ってたの?」
「この俺が!手ぶらで一颯を会わせるわけねぇじゃん!」
「そっか。知ってたんだ!
でも、いぶちゃんは知らないよね?きっと…」
「当たり前だろ?」
「どうして言わないの?」
「一颯が傷つくから」
「君は、本当に愛してるんだね」
「当たり前だろ?
俺は、一颯がいれば何もいらない」
「そう…
傷つくよね……いぶちゃん。僕……いや、俺の本性知ったら」
「煙草」
「え?」
「煙草吸うってだけで、かなり傷ついてたな」
「だね。
でも、正しいことだけじゃ……大切な人を守れなかった」

「正しいことって何?」

「え?」
「法律?」
「………」
「俺は自分の目で見て、自分が正しいと思ったことをしてる。まぁ、俺達は人を傷つけて生活してるから、正しいことじゃないかもしれねぇけど……
でもその分、組の為に全身全霊をかけてる。
俺の背中には、たくさんの組員がいるから。
だから、どんなに違反してても大切な人を守る為なら、俺は許されると思ってる」
「そう…かもね…」

「━━━━━━めてください!」
「いいじゃーん!!」
「お姉さん、チョー可愛い~!」
声の方を、颯天と徳仁が見ると一颯がナンパされていた。

「組長!」
「………ったく!だからやなんだよ!?」
颯天が一颯の元に向かう。

「俺達と飲もうよ~」
「嫌です!主人が待っ━━━━━━」
「一颯!!」
「あ!颯天!!」
「こっちおいで?」
「うん。
━━━━━━離してください!」
颯天の元へ行こうとするが、手を掴まれていて行けない。

「なんだよー!男連れかよ!?」
「俺の嫁の手、離せよ」
「あ?」
「おい…こいつ……どっかで……あっ!」
男達の中の一人が、颯天を見て途端にビビりだした。

「こいつ、ヤクザの組長だぞ!ヤベーよ!」
「は?どう見ても、ガキじゃん!」
「いや、確か…規格外の組があるって聞いた事がある。
だからその子の手、離してやれ!」
「何、ビビってんの?大丈夫だって!俺が━━━━━」
突然、一颯の手を掴んでいた男が胸ぐらを掴まれ、グッと持ち上げられた。

「手、離せっつったじゃん。
お前、耳ついてないの?」
「う…離……せ…」
「あーそうか!この耳、飾りなんだぁー
…………だったら…いらねぇよな………?」
「頼…む…離し、て…くれ……」
「は?なんで俺が、お前のお願い聞かなきゃならねぇんだよ!!?」

「颯天!!やめて!!」
一颯が止めに入る。
「銀二!井田!一颯を頼む」
「はい!姫、こちらへ!」

「お前は、俺と外出るぞ!」
「え……」
「店に迷惑かけらんねぇだろ?だから、出ろよ!」
颯天は胸ぐらを掴んだまま、男を引っ張り店を出ていってしまったのだった。
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