禁忌は解禁された
「銀くん、真紘くん!お願い、颯天を止めなきゃ!!」
「姫、ダメです!店の中にいてください!」
「お願い!!」
銀二と井田は、首を横に振る。

「いぶちゃん」
「え?なるくん?」

「俺が、止めてくる」
そう言って、店を出ていく徳仁。

「え……俺……?」
徳仁の雰囲気と言葉に、一颯はフリーズし店のドアを見つめていた。


徳仁が外に出ると、颯天にぼろぼろになぶられた男がいた。
それでも殴ろうとする颯天の手を掴む、徳仁。
「もうそこまででいいでしょ?やめてやれよ」
「あ?手、離せよ」
「相手はとっくにぼろぼろ、中でいぶちゃんも悲しんでる。もう……颯天くんがこいつを殴る意味がないよね?」

「“人殺し”に言われたくねぇよ」

「…………そうだね。でも、罪は償ってここにいるよ。
でも、颯天くんだって罪犯してるよね?」
「なんだよ、俺を脅してんの?」
「だったらどうする?」
「わかるだろ?俺は、神龍の組長だぞ」

「うん。
でももう……俺には、失うものは何もない。
この命だって…惜しくないよ。
いぶちゃんにも再会できたしね!」
睨み合う、颯天と徳仁。

ゆっくり手を下ろした颯天だった。

それから店に戻り、会計をして外に出た。
「なるくん」
「ん?」
「本当のこと、教えて?」
「え?」
「どんななるくんでも、受け止めるから」

「………僕…いや、俺はつい半年前まで刑務所にいた。
俺の親に借金をおわせた奴をなぶり殺したから。
会社経営者ってのも経営者には変わりないけど、人の情報を売って金にしてるんだ。
まっとうな会社じゃない」

「そう…」
「ごめんね。もう…いぶちゃんの思ってるような男じゃないんだ。汚ない人間だってわかってても、いぶちゃんに会いたかった」
切なく顔を歪め言った、徳仁。

「私は、ヤクザ組長の女だよ」

「え?」
「私達も、汚ない人間だよ。
私達は、人の涙が詰まったお金で生活してるよ」
「いぶちゃん…」

「私だって、ずっとなるくんに会いたかった。
高校生の時、なるくんがいたから頑張れた。
なるくんがいたから、全然辛くなかった。
なるくんは、何も変わってないよ!
優しくて、穏やかで、頭の良いヒーローだよ!」

「いぶちゃん…ありがとう……ありがとう…!」

「今度、同窓会しよ?
志乃や暁生くんも誘って!」
「うん!」

「ちょっと、待った!!」
そこに颯天が口を挟んでくる。

「え?」
「ダメだよ、一颯」
「どうして?」
「勝手に同窓会開こうとすんなよ!」
「いいでしょ?」
「俺はまた、余計な嫉妬しなきゃならねぇじゃん!?」
「だから、私は颯天が大好きって散々話したでしょ!?」
「それとこれとは、違うんだよ!?」

「フフフ……仲の良い夫婦だね!」

「笑うな!!」
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