禁忌は解禁された
「あ、あの!高森くん!」
「ん?」
「手、離して!お願い!」

「でも、一颯ちゃんはお姫様でしょ?危ないよ?」

違う!!
私が手を引いてほしいのは、この人じゃない!!

「お願い!!離して!」
一颯は、力の限り高森の手を振りほどいた。

「そんなムキになることないじゃん!
てか、怒っても可愛いね!」
「ここで大丈夫です!送ってくれてありがとうございました!」
一颯は軽く頭を下げ、去ろうとする。

「弟を好きになるなんて、どうかしてるよ!」

一颯の背中に向かって、呼びかける高森。
一颯はゆっくり、振り返った。

「いくら、血が繋がってないっていったって“弟”だよ?」
「高森くんに、わかってもらいたいなんて思いません。
失礼しました」
もう一度頭を下げ、今度こそ駅へ向かった一颯だった。

駅に着き、タクシーに乗り込んだ。
「お客さん、どこまで?」
「◯◯霊園までお願いします」
「はい」


颯天と一颯の両親が眠る墓地。
一際大きく、立派な墓。
「お父さん、ママ。
私、頭おかしいんだって。
私はただ、颯天と一緒にいたいだけなのに……」

颯太と律子の名前をなぞる。
しばらく二人の名前を見つめていた。

「………帰らなきゃ…
━━━━━━!!!!?電源切れてる……」

普段一人では行動しない、一颯。
その為、スマホの充電を気にしたことがないのだ。
いつも、颯天や銀二、井田がいてくれるから。

すると今度は、雨が降り出す。

「え?う、嘘……!!!?」
とりあえず、近くの大きな木の下で雨宿りする。

「まさか、雷なったりしないよね………?」


雨と雷は、地獄を思い出すスイッチだ。

【颯天、一颯……律子が………お前達の母さんが死んだ……】
颯太の突然の言葉。


七夜が振り上げるナイフ。

「一颯!!!?」
颯天に抱き締められる、一颯。

その二人を庇うように抱き締めた、颯太。

色んな事柄が、断片的に一颯の頭に蘇る。


颯太は最期に、颯天と一颯の頬を撫でて逝った。

その時の颯太の優しい微笑みが、頭から離れない。

一颯はその場にしゃがみこんだ。



そして、一方の颯天━━━━━━━━━━

ガン━━━━━!!!?
レストランで一颯のGPSが切れた為、そこで高森達に凄んでいた。

テーブルに高森を押しつける、颯天。

「だから!駅前で別れたって言ってるだろ!!?」
「駅にいねぇんだよ!!?」

「ご、ごめんなさい!!!颯天くん!!」
志乃が颯天に事情を説明し、必死に謝っている。

「謝るなら、ここに一颯を連れてこいよ!!
俺の一颯を返せ!!!」
颯天が志乃を鋭く睨む。

その瞬間………………
ドドーーーーーン!!!!と凄まじい音をさせ、雷が落ちた。
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