禁忌は解禁された
「「「「カンパーイ!!」」」」
一颯達は乾杯をして、飲み始めた。

「颯天のこと、聞いてもいいかな?」
「はい、もちろん!」
「颯天って、やっぱりモテた?」
「え?あ、ま、まぁ…」

「だよね…」

「でも、お姉さん…あ、じゃない。
一颯さんも、モテたんじゃないんすか?」
辰之が言う。

「俺、一颯さんと同じ大学に通ってるんですが、聞いてますよ?」
陽大が微笑み言った。

「あ、もしかして、矢崎先生?」
「はい!今は、助教ですよ」
「へぇー!矢崎先生、助教授になったんだぁ」
「あのプライドが高い矢崎が、一颯さんのことは美人っつってましたよ!しかも、色んな学生が口説いてたって噂だし」
「そんなこと…////」

「でも、颯天も凄かったよなぁ」

「え?」
「おい、槙雄!やめろよ!」
辰之が慌てて止める。

「え?槙雄くん、何?」
「あ、いや…」
「教えて?」

「喧嘩!!」
辰之が口を挟む。
「え?」
「高校に入学した時、颯天ってあの容姿だから一気に王子とか言われてさ。
当時の三年のボスって言われてた先輩に目をつけられて、タイマンをしかけられたんだけど瞬殺だったんだ。そしたら、またそれが一気に広まって色んな奴に喧嘩売られるようになって……
その人達も、瞬殺で倒していったんだ」

「そうなんだ。辰之くん達は、颯天のこと怖いって思う時ある?」
「まぁ、正直……」
「あいつに睨まれると、ほんと動けなくなる」
「睨むだけで、ひれ伏させる時あるもんなぁー」

「そうゆう意味では、ヤクザっぽいかも?」

「そっか」
「でも、仲間想いだよ!」
「え?」
「俺や槙雄は、颯天に助けられたから。
仲間がやられると、あいつ一人で仕返しに向かってくんだ」

「あいつは、いつだって一人で向かってく」

「え?」

「どうしてだと思う?」
「えーと…」
一颯はゆっくり首を横に振る。

「誰も巻き込まないように。
誰も、傷つけないようにって……」
「優しいよな」

「だから俺達も、颯天を見捨てたりしない」

「ありがとう!」
「え?」
「颯天のこと、ちゃんとわかってくれる人がいて嬉しい!ありがとう!」


「姫」
「ん?」
「組長が帰ってきましたよ」
井田が声をかけてきて、一颯は出迎えに向かった。

「もうすぐ組長が参りますので、少しお待ちください」
井田が辰之達に、頭を下げた。

井田も部屋を出ていき、辰之達は三人だけになる。

「つか、ほんと…美人だよなぁー」
陽大が、感心したように言った。
「だな!ヤバいよな…なんか、いい匂いするし」
「槙雄、キモいよ…」
辰之が呆れたように言う。

「でも…」
「ん?辰之?」
「颯天が、禁忌を犯そうとした気持ち、わからなくもない」
「確かに……」

「一颯さんなら、俺も…」
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