禁忌は解禁された
「わりぃな。
突然、喧嘩売ってきたバカの相手してて…」

そこに颯天が入ってきた。
そして組員がぞろぞろ入ってきて、料理をセッティングする。

「なんか、豪華だな」
「そう?」
「スゲー!!」

颯天は煙草を咥える。
すると、近くにいた組員が火をつけた。

「なんか、颯天。
突然、遠くに行ったみたいな感じだな」
唐突に槙雄が言った。

「ん?」
「俺達にとっては、颯天だから」
「は?俺、颯天だけど?」

「違うだろ!
お前は、神龍組の組長じゃん!」
「まぁ、そうだな」

「あの時、びっくりしたんだからな!大学行かねぇって言い出して“縁を切りたい”なんて言ってきた」
槙雄が少し怒ったように言う。

「だって、ヤクザに身を置く決意をして、しかも!禁忌犯す気だったから。お前等に迷惑かかると思って」

「まぁ、確かにびっくりしたよなぁー」
「だよな。
“姉ちゃんと生きていく”って言って、よくよく聞いたらマジで惚れてるなんて。
親父さんが死んで、今度は結婚する。
しかも、相手は一颯さんで血が繋がってなかったからって……」

「だよな(笑)俺も、自分でびっくりだよ」
自嘲気味に笑い、煙草の煙を天井に吐く。

「組長、飲み物どうされますか?」
「ん。お前等、何飲む?」
「ビールで!」
「俺も!」
「俺は、日本酒がいいな」

「ん。冷や?燗?」
「あ、冷やで!」
「だって!頼む」

「はい。組長は?」
「俺も、ビールにする」

「はい。かしこまりました」

組員が出ていく。
そして飲み物が運ばれ、飲み始めた。

「てか、組長って大変?」
「まぁな。でも、ほとんど銀二がカバーしてるからなぁ」
「銀二?」
「あー!いつも横についてるイケメン?」
「うん」
「へぇー!」
「親父も、かなり頼りにしてた男でさ。親父が死んで、今は俺のサポートしてくれてる」
「もしかして、一颯さんが大学の時の騎士?」
「あーそうだな。
一颯が学生の時は、ずっと銀二がついてたから。
大学卒業して、井田に代わった。
つか、なんで知ってんの?」

「だから!俺は一颯さんと同じ大学だっつってんじゃん!」
「あ、そうか!」

「そのイケメンが彼氏って噂されてたみたいだぜ」

「は?」

「だから!その銀二…さん?その人。
つか、怖っ!!俺を睨むなよ、颯天」

「あー、わりぃ」


そう言って、ビールを一口飲んだ。



< 54 / 85 >

この作品をシェア

pagetop