禁忌は解禁された
「若」
颯天と一颯が去った後、井田は銀二を見据えた。

「ん?」
「俺に、こいつの始末をさせてください。
どうしても、許せない。
俺のこの手で、地獄に落としたい」

「あぁ…わかった。
井田。前に、言ったよな?
“お前が姫を守る為にやったとこは、俺が全部責任を取ってやる”って。
だから、お前の思うように殺ってこい!」

「はい」


「━━━━━一颯、大丈夫?」
ソファに座り、颯天が一颯の頬にカットバンを貼る。
そして頭を撫でた。

「うん…」
「井田のこと、許してやって」
「わかってるよ。私を助けようとしてくれたんだから」
小さく微笑むと、颯天がカットバンの上からキスをした。

「………颯天」
「ん?」
「時々……」
「うん」
「忘れそうになる」
「ん?」

「私達は、極道の世界にいること」

「そう…」
「颯天達が、優しいから。
それに私には、怖いもの見せないようにしてくれてるでしょ?だから時々こんな風に、恐ろしいみんなを見ると……思い知らされる………」
そう言って、颯天に抱きついた一颯。

颯天は、ゆっくり背中を撫でる。

“弟となんて、気持ち悪い…”

道加の言葉が蘇った。
一颯は頭を横に振る。

「なんか、疲れちゃった……
もう、寝たいな」
颯天の腕の中から、見上げ言った。

「じゃあ、寝よ?
待ってね。着替えるから」

颯天がジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めた。
一颯は思わず見惚れる。

「ん?何?」
「う、ううん////」

そしてネクタイを取り、カッターシャツのボタンを外した。
カッターシャツの隙間から刺青が見え、それが色っぽく映る。

一颯は、身体が熱くなるのがわかった。

道加の言葉が、頭の中をこだまする。


“弟に、欲情するなんて気持ち悪い!”


道加の声が、頭の中に響いた。

「………っ…!!?」
一颯はバッと立ち上がった。

「一颯?どうした?」
「わ、私////頭冷やしてくる!」

そう言って、バスルームに逃げるように向かった。

「ちょっ…!!!一颯!!?」

一颯はバスルームに着くと、服のまま浴室に入りシャワーを頭からかけた。

“穢らわしい女”

「はぁはぁ……」
一颯は項垂れるようにシャワーをかかりながら、肩で息をする。

「一颯!!!?何やって━━━━━!!!?
………これ、水じゃん!!!?
やめろよ、風邪ひく!!」

颯天も服のまま浴室に入ってきて、二人共ずぶ濡れになる。

「離して!!!」

「は!!?何言ってんだよ!!?」

「私は!!!気持ち悪い女なの!!!」

「はぁぁ!!?とにかく、出るぞ!!!」

颯天は一颯を抱き上げ、バスルームを出た。
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