禁忌は解禁された
「姫!!ダメに決まってます!!
俺達の仕事は、姫の想像を越える恐ろしい所です!」
普段冷静な銀二が動揺し、自身を“俺”と言っている。

「なんで、知りたいの?一颯」
颯天は、いたって冷静に一颯に問いかけた。


「真紘くん、道加さんは今どうしてるの?」

「それは……」
「ご自宅に帰っていただきました」
銀二が、真っ直ぐ一颯を見て答える。

「フフ…ほんっと、嘘が下手だねー!銀くん」
一颯がクスクス笑い言った。

「若、無理ですよ。姫に、嘘は通用しません。
わかってるでしょ?」
暁生が銀二に言った。
そして、一颯に向き直った。

「姫、本当に知りたい?
多山 道加が、本当はどうなったか」
暁生の視線が、いつになく鋭い。

「うん」

田之上(たのうえ)のこと覚えてる?
俺が、高二ん時に半殺しにした奴」
「うん…」
「あの時、ショックで三日間寝込んだよね?
俺の殺ったことが、残酷だって言って」
「う、うん」

「井田さんが殺ったことは、それをはるかに越える残酷なことだよ?
それでも、知りたいの?」

「うん」

「そう…わかった。じゃあ、俺が教えてやる」

「暁生!!」
「若!!姫が教えろと言ってます。
組長も言ってたじゃないですか!
神龍組の中心は“一颯”なんでしょ?
……………組長!いいですよね?」

暁生は鋭い視線で銀二に言い、颯天に向き直った。

「いいよ」
今まで黙って聞いていた颯天が、静かに頷いた。

「組長!!」
「銀二!!黙ってろ」
「………はい」



昨夜━━━━━━━

『ここ、どこ……?』
道加が目を覚ますと、真っ暗な空間にいた。
とにかく神龍寺の屋敷じゃないこと、建物の中にいること。

そして………

自分がこれから“無事に”帰れないことだけはわかった。

しばらくすると、目が暗闇に慣れ周りが見えてきた。
『え………貴方は…』

『あ、気づいた?つか、お前バカ?
気づくのオセーよ』
井田が簡易椅子に座り、道加を真っ直ぐ見つめていた。

『あ…あ……』
道加が、怯え出す。
拳銃を突きつけられた時の恐怖が蘇る。

井田が煙草を取りだし吸い出した。

『まぁ…楽しもうや……』

すると咥え煙草で立ち上がり、簡易椅子を畳んだ。
そして椅子を持って道加に近づき、振り上げ椅子で道加を殴った。

ブブーーッと血を吐いて、道加が倒れた。

『まだまだ、終わらねぇよ…』
道加の髪の毛を乱暴に掴み、顔を近づけて囁いた。
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