禁忌は解禁された
ドサッ………

まるで、スローモーションのように一颯が倒れた。

「え……い、ぶ…
━━━━━━一颯!!!!?」

「「「姫!!!?」」」

近くにいた組員がその男を押さえ、颯天、銀二、井田が一颯に駆け寄る。

「一颯!!!?一颯!!?」
「姫!!?」
「姫!!」

「はぁはぁ…はや…て、怪我…は…?」
「ないよ!!なんで、庇うんだよ!!?」
「良かっ……」

(雨と雷…どうか連れてくなら、私を連れていって)

「姫!!!」
「銀…く……ま、ひろく……」
「姫!!?」

颯天の頬に触れた一颯。
少し撫で、ゆっくり一颯の手が落ち、た。


「一颯……?一颯!!!?嘘だろ!!?」

「組長!!落ちついてください!
急所は外れてます!!
とにかく、揺らさないで!!」
銀二がジャケットを脱ぎ、傷口を押さえる。

「姫!!救急車すぐ来ますからね!!」

幸い、一颯は呼吸をしっかりしている。
しかし、顔は青白く呼吸も荒い。


ズン━━━と、颯天、銀二、井田の雰囲気が落ちる。


颯天はゆっくり一颯を地面に下ろし、自身のジャケットをフワリとかけた。
そして一颯の額に雨で貼り付いた前髪を、優しく払った。
「一颯、ちょっと待っててね。すぐ終わらせるから」
一颯の額にキスをした、颯天。


一颯を刺した男を見据えた。
「銀二、井田」
「「はい」」

「一颯を頼む」
「「はい」」


押さえられている、男の元に向かった颯天。

おもいっきり蹴りあげた。
男は、血を噴き出しながらかなりの距離吹っ飛んだ。
大雨と雷が鳴り響く中、颯天が髪の毛をかきあげる。

雷の稲光が、颯天を更に恐ろしくさせる。

そして男を見る目は、真っ黒だった。
幹部の組員達は、その姿を見て思う。


神龍寺 颯太?いや……こいつは……



神矢 天馬━━━━━━


「【地獄に落ちろ……!!】」


一度キレると、まるで機械のように相手をなぶる天馬。
神龍組の幹部のほとんどは、天馬を知っている。

誰もが、天馬を恐れていた。
颯太も恐れられていたが、天馬はそれをはるかに超える恐ろしさだったのだ。

颯天はまさに……颯太と天馬を二人合わせたようだ。


まるで、映画でも見てるようだ。


拳銃で狙った男と、一颯を刺した男がぼろぼろになぶられていく。
反撃も許さない早さで。

誰もが、その場を動けずにいた。


これが━━━神龍組の組長を颯天が継ぐことに“誰一人”反対しなかった所以である。

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