禁忌は解禁された
颯天と一颯と銀二

【颯天と天馬】

雨と雷。

それは神龍組にとって“地獄”そのモノの組み合わせだ。

律子を奪い、颯太を奪った雨と雷。


そして今日も、朝から曇りで今にも雨が降りそうな天気だった。



「舘市おじ」
「━━━━━颯天と銀二か……」

何かを察したような、舘市。

しかも、颯天と銀二を“組長と若”という呼び方ではなく、昔のように呼んでいる。

颯太が生きてた頃は、二人の事を舘市だけは“颯天と銀二”と呼んでいた。



「なんで来たか、わかるよな?」

「もちろん」

「舘市おじのことだ。
なんか、ちゃんとした理由があるんだろ?」
颯天が真っ直ぐ舘市を見て言う。
視線は鋭いが、どこかすがるような雰囲気だ。

「その前に、銀二。
“あの話”考えてくれてた?」

「は?銀二?」
颯天が、後ろに控えている銀二を見る。

「俺の答えは、最初から決まってます」
銀二は舘市を見据えて言った。

「………やはり、そうか」
「なんなんだよ…!?」

「颯天、私は銀二にある提案をした」



三日前━━━━━━

銀二は一人、舘市に会いに行っていた。
「━━━━━何故、組長と姫を裏切るような事を?」

「二人には、神龍を背負えない。
しかも一颯は、妊娠したんだろ?
子どもにも、こんな汚ない世界を見せるのか?
銀二、まだ間に合う。
俺がサポートするから、お前が神龍を背負え!
そして、颯天と一颯を解放してやれ!」

「まさか、貴方……二人の為に……?」

「実は、颯太に“託されていたこと”がある」

「え?」

舘市は、古びた手帳を出した。

「これは……」
「颯太のタンスから抜き取った」

「やはり、貴方が?」

そしてページを捲り、銀二に見せた。
「ここを読め」

【颯天、一颯へ
これを二人が読む時、俺はいない。
もしこの先、二人が神龍を継ぐことを辛いと感じたなら、舘市に相談しろ!
お前等を、表の広い綺麗な世界に出してやる。
その為の準備は、できている。
どうか、幸せになってほしい。
颯天の本当の両親・神矢 天馬、織枝と、俺と律子の分まで。
父・神龍寺 颯太】

「これは……」

「私は、颯太の思いを叶えてやりたい」

「俺は、神龍寺 颯天と一颯の為に生きる。そう決めてここにいる。
神龍の組長は、颯天。
姉さんは、一颯だ!」

「まぁまぁ、ゆっくり考えろ………!」

舘市は、微笑み銀二を見据えていた。
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