臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「今日友達来るけど,いい?」



いい? ってもう決まってるんじゃん。

私の反応を窺うようにする澪に私は乾いた笑いを落とした。



「うん,大丈夫。何時まで? 遅くなるならお義母さんにも伝えなきゃ……私,晩御飯作ろうか?」



私が冷蔵庫の中身を思い出しながら首をかしげると,澪は反射のように眉を潜める。



「いや,いい。それは俺が許せないから。あと7時には何がなんでも叩き出す。……ったく,そもそも入れるつもりなんて…」



許せない? な,何が?

澪がぶつぶつと不満そうに喋るせいで,後半はまともに聞き取ることも出来なかった。



「ごめん澪。もう一回…」

「いや,なんでも」



眉を下げて訊ねる私に,澪はふいっと顔を背ける。

私が混乱していると,澪は私の足元にあった自分の靴に手をかけた。
< 10 / 262 >

この作品をシェア

pagetop