臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「じゃあね」



私が言って,



「またね~」



と礼夢くんが言う。

私はそんな姿に感謝しながらくすくすと笑い,家へと向かった。

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「みお,遅い。どこにいたの」



揺らぐ澪の声。

あのまま帰らず申し訳ない気持ちになりながらも,何故か直視できない。



「みお」

「礼夢くんと,お茶してた」

「は?」

「礼夢くんと,お茶してた。ごめんね澪,心配掛けて」

「何で,泣いたの?」



すっとんきょうな顔をした澪だったけれど,それよりも,と言った表情で私の顔へ手を伸ばす。

今,私に触れないで欲しい。

何を見て,私がそう思ったのかは分からない。

初めて私の心が澪を拒否した瞬間だった。


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