臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「みお,俺は,みおが好きだ」



澪の声も,表情も,何も見えない。

頭が真っ白になって,考えたくもない。

奇跡よりも低い確率の中,喜びが生まれないことにだけ私は疑問を抱く。

それどころか。

嬉しいはずなのに,涙が出るのは何でなんだろう。

どうして,こうなっちゃったんだろう。

歪む視界の中で私に微笑んだ人。

私の大好きだったあなたはーーー



ードンッ



いつの間にか,私は目の前に来ていた澪を突き飛ばしていた。

瞳から溢れる涙が,光を反射しながら飛んでいく。



「みお?」



突然のことに,澪が瞬く。



「みお,なんで泣くの……みお?」



だけど,私は止まらない。



「やめて,やめてよ澪。私,私は…約束した,約束したんだから」

「なに言って,みお,ちょっと」



私は走り出す,澪をおいて。

訳も分からず,一直線に。

< 138 / 262 >

この作品をシェア

pagetop